はじめに
ICTの活用が広がる中で、子どもたちはますます自由にインターネットやSNSを使うようになりました。
でもその一方で、“知らないうちに相手を傷つけてしまう”、“うっかり個人情報を公開してしまう”など、モラルやルールに関するトラブルも増えています。
だからこそ、子どもたちには「インターネットは便利だけど、責任もともなうものなんだよ」ということを、大人がしっかり伝えていく必要があります。
この章では、「ルールを守る」「他人を思いやる」「著作権を尊重する」など、ICTを安心して使うためのモラルやマナーについて、わかりやすく学んでいきます。
“自由に使える”からこそ、“正しく使える”力が求められています。子どもたちと一緒に、正しい使い方を考えていきましょう。
6-1. インターネットを使うときのルール(デジタル・シティズンシップ)
インターネットは便利で楽しい世界ですが、使い方を間違えるとトラブルにつながることもあります。
だからこそ、子どもたちには「デジタル・シティズンシップ」の考え方をしっかり身につけてもらう必要があります。
デジタル・シティズンシップとは、インターネットを利用する際に「正しく」「安全に」「責任を持って」行動することを指します。
たとえば、次のようなポイントが大切です。
- 個人情報をむやみに公開しない
- 他人を傷つける発言や行動をしない
- 著作権を尊重し、無断転載をしない
- フェイクニュースに惑わされないよう情報を確認する
ICTの活用が広がる中で、このようなルールを理解し、実践できる力を育てることが求められています。
デジタル・シティズンシップの基本行動
基本行動 | 具体例 |
---|---|
個人情報の保護 | 本名や住所、電話番号をSNSに投稿しない |
リスペクトと配慮 | 相手の意見を尊重し、誹謗中傷をしない |
著作権の尊重 | 画像や音楽を無断で転載・使用しない |
フェイクニュース対策 | 情報源を確認し、信頼性の低い情報を拡散しない |
安全なパスワード管理 | 長くて複雑なパスワードを設定し、使い回しを避ける |
💬 「“ネットの中にも人がいる”を伝える」
インターネットやSNSを使うとき、子どもたちは「画面の向こう側に人がいる」ことを忘れがちです。
ネット上での発言や行動が、相手にどのような影響を与えるかを考える意識が欠けると、トラブルに発展してしまうこともあります。
たとえば、冗談のつもりで書いたコメントが、相手を深く傷つけてしまうこともあります。文字だけのやりとりでは、表情や声色が伝わらないため、誤解が生じやすいのです。
「ネットの中にも人がいる」ことを常に意識し、発言や行動には責任を持つように、大人がしっかりと教える必要があります。
ポイントまとめ
- インターネット利用には「デジタル・シティズンシップ」を意識し、「正しく」「安全に」「責任を持って」使うことが重要。
- 個人情報の保護、リスペクト、著作権の尊重、フェイクニュース対策、安全なパスワード管理が基本行動となる。
- ネット上でも「相手がいる」ことを忘れず、発言や行動に責任を持つ意識を育てる。
- 「自由に使える」からこそ、「正しく使える」力を育てることが必要である。
6-2. 著作権とライセンス(Creative Commons とは?)
インターネット上には、たくさんの画像や音楽、文章があふれています。しかし、それらには必ず「つくった人」が存在し、著作権という権利が発生しています。
子どもたちがインターネットで素材を使う際には、必ず「著作権」や「ライセンス」の確認が必要です。
特に、「Creative Commons(クリエイティブ・コモンズ)」は、著作権者が自分の作品を「自由に使ってもいいですよ」と公開する際に使うマークです。
このマークが付いている素材は、利用条件を守れば自由に使うことができますが、条件を無視すると法律違反になることもあります。
たとえば、「表示(BY)」という条件があれば、使うときに必ず「作者名」を記載しなければなりません。また、「非営利(NC)」という条件があれば、商用利用は禁止です。
ICT教育では、こうした著作権やライセンスをしっかり理解し、ルールを守って利用する姿勢を身につけることが大切です。
著作権とCreative Commonsの基礎
項目 | 内容 |
---|---|
著作権 | 作品を作った人が持つ権利で、無断使用や改変を禁止 |
ライセンス | 著作物の使用条件を示し、利用方法を明確にする |
Creative Commons | 著作権者が作品を自由に使えるよう条件を付けて公開する仕組み |
表示(BY) | 作者名を表示すれば利用可能 |
非営利(NC) | 商用利用は禁止 |
改変禁止(ND) | 元の作品を改変せずに使用する |
継承(SA) | 同じライセンスを付けて再配布可能 |
💬 「“ネットにある=自由に使っていい”ではない」
インターネットには、たくさんの画像、音楽、文章が公開されていますが、「ネット上にあるから自由に使っていい」と思うのは大きな間違いです。
実際には、それぞれの素材には「つくった人」がいて、著作権が発生していることを理解しなければなりません。
特に、Creative Commonsのマークがある素材でも、利用条件を守らないと法律違反になることがあるため、使う際には必ず「利用条件」を確認しましょう。
大切なのは、インターネット上の作品も「誰かが作った大切なもの」であり、その権利を守る意識を育てることです。
ポイントまとめ
- 著作権やライセンスは、インターネット上の素材を使う際に必ず確認すべきポイントである。
- Creative Commons(CC)は、著作権者が利用許可を与えるためのマークであり、利用条件を守る必要がある。
- 「表示(BY)」「非営利(NC)」「改変禁止(ND)」「継承(SA)」の条件を理解して適切に利用する。
- 「ネットにあるから自由に使っていい」という誤解をなくし、著作権を守る意識を育てることが大切である。
- インターネット上の素材も、「誰かが作った大切なもの」であるという意識を持って利用する。
6-3. インターネットの正しい使い方を子どもに教える方法
子どもたちがインターネットを安全に、そして責任を持って使えるように、大人がしっかりと教えることが大切です。
インターネットの特性を理解し、「何をしてはいけないか」だけでなく、「どうすればトラブルを避けられるか」を伝えることがポイントです。
以下は、子どもたちに教えるときに意識したいポイントです。
- インターネット上の情報には「本当」と「ウソ」が混在していると伝える
- 知らない人からのメッセージには返信しない
- 個人情報を守るために、SNSに住所や学校名を載せない
- インターネット上で知り合った人とは実際に会わない
- 困ったことがあれば、大人に相談する勇気を持つ
正しい使い方を学ぶことで、子どもたちはインターネットを安心して活用できるようになります。
子どもに伝えたいインターネットの使い方5つのポイント
ポイント | 具体例 |
---|---|
情報の信頼性を確認する | ニュースサイトや出典をチェックし、信頼性を確かめる |
知らない人からのメッセージに注意する | 怪しいリンクをクリックせず、大人に相談する |
個人情報を守る | SNSに名前や住所、学校名を公開しない |
インターネット上で会った人と実際に会わない | 直接会う約束は絶対にしない |
困ったら大人に相談する | いじめや脅しを受けたときは、保護者や先生に話す |
💬 「“ダメ”より、“一緒に考える”を大切に」
子どもたちにインターネットの正しい使い方を教えるとき、「これをしてはいけない」と言うだけでは、十分に理解してもらえないことが多いです。
「どうしてダメなのか?」「もし問題が起きたらどうするのか?」を一緒に考えることで、子どもたちは自分で判断する力を身につけていきます。
「危ないから使わない」ではなく、「どうすれば安全に使えるか」を考えさせることで、ICT活用力が育ちます。
大人が一方的に教えるのではなく、子どもと対話しながら学ぶ姿勢が大切です。
ポイントまとめ
- インターネットの使い方を教えるときは、禁止するだけでなく「どうしてダメなのか」を一緒に考えることが大切。
- 子どもたちが自分で判断できる力を育てるためには、大人が寄り添いながら対話する姿勢が必要。
- 「危ないから使わない」ではなく、「どうすれば安全に使えるか」を考えさせることで、ICT活用力を高める。
- 子どもたちが安心してインターネットを使えるように、ルールとモラルを正しく理解させることが重要。
6-4. ICT機器を使う際のマナー(タイピング・オンライン授業での態度)
ICT機器を使うときには、マナーやルールを守ることが大切です。特に、タイピングやオンライン授業での態度には、周囲への配慮が求められます。
タイピングの際には、以下の点を意識しましょう。
- 静かに操作する(キーを強く叩かない)
- 周りが気にならないような姿勢を保つ
- 他人の画面を覗き込まない
オンライン授業では、次のようなマナーを心がけましょう。
- カメラは正面を向け、顔が映るようにする
- 発言時以外はマイクをミュートにする
- 発言する前には手を挙げるか、合図を送る
- 雑音が入らない環境を作る
ICTを活用する際には、周囲に配慮しながら適切なマナーを身につけることが大切です。
ICT活用時に子どもに伝えたいマナー集
場面 | マナー例 |
---|---|
イヤホン使用時 | 音量は小さめに/周囲の音が聞こえるように片耳だけが◎ |
機器の扱い | タブレットを片手で持たない/ふざけて落とさないようにする |
タイピング時 | 静かに操作し、キーを強く叩かない |
教室でのPC使用 | 姿勢を正し、他人の画面を覗かない |
オンライン授業 | カメラを正面に向け、マイクは発言時のみオンにする |
チャット利用 | 短文で簡潔に、誤解を生まない表現を心がける |
共有デバイス | 使用後はログアウトし、他人のデータを残さない |
💬 「マナーは“自分もまわりも大事にする”ルール」
ICT機器を使う際のマナーは、「自分だけが良ければいい」ではなく、「まわりの人も心地よく使えるか」を意識することが大切です。
特に、オンライン授業や教室でのPC使用では、周囲の環境や他の人の気持ちに配慮することが求められます。
「自分のことだけ」ではなく、「まわりを大切にする」意識が、マナーを身につける第一歩です。
ICTを使うときこそ、周囲を思いやる気持ちを大切にしましょう。
ポイントまとめ
- ICT機器を使う際には、周囲への配慮を意識し、適切なマナーを守ることが重要である。
- タイピングやオンライン授業では、静かに操作し、他者に迷惑をかけないよう注意する。
- イヤホン使用時や共有デバイスの扱いなど、使用シーンごとに適切なルールを身につける。
- 「自分だけ」ではなく「まわりを大切にする」意識を持つことが、ICT活用マナーの基本である。