第6章
ICT教育におけるモラルとルール

ICT子ども教育者検定3級

はじめに

ICTの活用が広がる中で、子どもたちはますます自由にインターネットやSNSを使うようになりました。

でもその一方で、“知らないうちに相手を傷つけてしまう”、“うっかり個人情報を公開してしまう”など、モラルやルールに関するトラブルも増えています。

だからこそ、子どもたちには「インターネットは便利だけど、責任もともなうものなんだよ」ということを、大人がしっかり伝えていく必要があります。

この章では、「ルールを守る」「他人を思いやる」「著作権を尊重する」など、ICTを安心して使うためのモラルやマナーについて、わかりやすく学んでいきます。

“自由に使える”からこそ、“正しく使える”力が求められています。子どもたちと一緒に、正しい使い方を考えていきましょう。

6-1. インターネットを使うときのルール(デジタル・シティズンシップ)

インターネットは便利で楽しい世界ですが、使い方を間違えるとトラブルにつながることもあります。

だからこそ、子どもたちには「デジタル・シティズンシップ」の考え方をしっかり身につけてもらう必要があります。

デジタル・シティズンシップとは、インターネットを利用する際に「正しく」「安全に」「責任を持って」行動することを指します。

たとえば、次のようなポイントが大切です。

ICTの活用が広がる中で、このようなルールを理解し、実践できる力を育てることが求められています。

デジタル・シティズンシップの基本行動

基本行動具体例
個人情報の保護本名や住所、電話番号をSNSに投稿しない
リスペクトと配慮相手の意見を尊重し、誹謗中傷をしない
著作権の尊重画像や音楽を無断で転載・使用しない
フェイクニュース対策情報源を確認し、信頼性の低い情報を拡散しない
安全なパスワード管理長くて複雑なパスワードを設定し、使い回しを避ける

💬 「“ネットの中にも人がいる”を伝える」

インターネットやSNSを使うとき、子どもたちは「画面の向こう側に人がいる」ことを忘れがちです。

ネット上での発言や行動が、相手にどのような影響を与えるかを考える意識が欠けると、トラブルに発展してしまうこともあります。

たとえば、冗談のつもりで書いたコメントが、相手を深く傷つけてしまうこともあります。文字だけのやりとりでは、表情や声色が伝わらないため、誤解が生じやすいのです。

「ネットの中にも人がいる」ことを常に意識し、発言や行動には責任を持つように、大人がしっかりと教える必要があります。

ポイントまとめ

6-2. 著作権とライセンス(Creative Commons とは?)

インターネット上には、たくさんの画像や音楽、文章があふれています。しかし、それらには必ず「つくった人」が存在し、著作権という権利が発生しています。

子どもたちがインターネットで素材を使う際には、必ず「著作権」や「ライセンス」の確認が必要です。

特に、「Creative Commons(クリエイティブ・コモンズ)」は、著作権者が自分の作品を「自由に使ってもいいですよ」と公開する際に使うマークです。

このマークが付いている素材は、利用条件を守れば自由に使うことができますが、条件を無視すると法律違反になることもあります。

たとえば、「表示(BY)」という条件があれば、使うときに必ず「作者名」を記載しなければなりません。また、「非営利(NC)」という条件があれば、商用利用は禁止です。

ICT教育では、こうした著作権やライセンスをしっかり理解し、ルールを守って利用する姿勢を身につけることが大切です。

著作権とCreative Commonsの基礎

項目内容
著作権作品を作った人が持つ権利で、無断使用や改変を禁止
ライセンス著作物の使用条件を示し、利用方法を明確にする
Creative Commons著作権者が作品を自由に使えるよう条件を付けて公開する仕組み
表示(BY)作者名を表示すれば利用可能
非営利(NC)商用利用は禁止
改変禁止(ND)元の作品を改変せずに使用する
継承(SA)同じライセンスを付けて再配布可能

💬 「“ネットにある=自由に使っていい”ではない」

インターネットには、たくさんの画像、音楽、文章が公開されていますが、「ネット上にあるから自由に使っていい」と思うのは大きな間違いです。

実際には、それぞれの素材には「つくった人」がいて、著作権が発生していることを理解しなければなりません。

特に、Creative Commonsのマークがある素材でも、利用条件を守らないと法律違反になることがあるため、使う際には必ず「利用条件」を確認しましょう。

大切なのは、インターネット上の作品も「誰かが作った大切なもの」であり、その権利を守る意識を育てることです。

ポイントまとめ

6-3. インターネットの正しい使い方を子どもに教える方法

子どもたちがインターネットを安全に、そして責任を持って使えるように、大人がしっかりと教えることが大切です。

インターネットの特性を理解し、「何をしてはいけないか」だけでなく、「どうすればトラブルを避けられるか」を伝えることがポイントです。

以下は、子どもたちに教えるときに意識したいポイントです。

正しい使い方を学ぶことで、子どもたちはインターネットを安心して活用できるようになります。

子どもに伝えたいインターネットの使い方5つのポイント

ポイント具体例
情報の信頼性を確認するニュースサイトや出典をチェックし、信頼性を確かめる
知らない人からのメッセージに注意する怪しいリンクをクリックせず、大人に相談する
個人情報を守るSNSに名前や住所、学校名を公開しない
インターネット上で会った人と実際に会わない直接会う約束は絶対にしない
困ったら大人に相談するいじめや脅しを受けたときは、保護者や先生に話す

💬 「“ダメ”より、“一緒に考える”を大切に」

子どもたちにインターネットの正しい使い方を教えるとき、「これをしてはいけない」と言うだけでは、十分に理解してもらえないことが多いです。

「どうしてダメなのか?」「もし問題が起きたらどうするのか?」を一緒に考えることで、子どもたちは自分で判断する力を身につけていきます。

「危ないから使わない」ではなく、「どうすれば安全に使えるか」を考えさせることで、ICT活用力が育ちます。

大人が一方的に教えるのではなく、子どもと対話しながら学ぶ姿勢が大切です。

ポイントまとめ

6-4. ICT機器を使う際のマナー(タイピング・オンライン授業での態度)

ICT機器を使うときには、マナーやルールを守ることが大切です。特に、タイピングやオンライン授業での態度には、周囲への配慮が求められます。

タイピングの際には、以下の点を意識しましょう。

オンライン授業では、次のようなマナーを心がけましょう。

ICTを活用する際には、周囲に配慮しながら適切なマナーを身につけることが大切です。

ICT活用時に子どもに伝えたいマナー集

場面マナー例
イヤホン使用時音量は小さめに/周囲の音が聞こえるように片耳だけが◎
機器の扱いタブレットを片手で持たない/ふざけて落とさないようにする
タイピング時静かに操作し、キーを強く叩かない
教室でのPC使用姿勢を正し、他人の画面を覗かない
オンライン授業カメラを正面に向け、マイクは発言時のみオンにする
チャット利用短文で簡潔に、誤解を生まない表現を心がける
共有デバイス使用後はログアウトし、他人のデータを残さない

💬 「マナーは“自分もまわりも大事にする”ルール」

ICT機器を使う際のマナーは、「自分だけが良ければいい」ではなく、「まわりの人も心地よく使えるか」を意識することが大切です。

特に、オンライン授業や教室でのPC使用では、周囲の環境や他の人の気持ちに配慮することが求められます。

「自分のことだけ」ではなく、「まわりを大切にする」意識が、マナーを身につける第一歩です。

ICTを使うときこそ、周囲を思いやる気持ちを大切にしましょう。

ポイントまとめ