第3章
子ども向けプログラミング教育の基礎

ICT子ども教育者検定3級

はじめに

2020年度から小学校でも必修化された「プログラミング教育」。けれど、“プログラミング”と聞くと、ちょっと難しそう…と感じる方もいるかもしれません。

でも大丈夫。ここで目指すのは「子どもたちが考える力を育てること」。つまり、コードを書くことよりも、“順番に考える力” “試行錯誤する力”を育てることが大切なのです。

この章では、プログラミング教育の目的やScratchなどの基本、子どもたちへの指導のコツまで、やさしく解説していきます。

遊びの中で学ぶ“思考のトレーニング”、一緒に探っていきましょう!

3-1. プログラミング教育の目的(プログラミング的思考とは?)

プログラミング教育と聞くと、「コードを打ち込んでアプリを作る」ようなイメージを持つ方も多いかもしれません。

でも、学校で学ぶプログラミングの目的は、「コードを書くこと」ではなく、「考える力を育てること」です。

具体的には、「プログラミング的思考」を身につけることが目標です。これは、物事を順序立てて考える力(論理的思考)や、うまくいかないときに原因を見つけて改善する力(問題解決力)のことです。

たとえば、「キャラクターを3歩進ませたい」というとき、「まずスタート、次に右へ3歩、最後に止まる」など、手順を整理して命令を組み立てていきます。

このような体験を通して、子どもたちは試行錯誤しながら自分で考える力を自然に育てていくのです。

プログラミング教育と教科学習の違い

比較項目教科学習例プログラミング教育例
学びの中心正解を覚える方法を考える
進め方教科書やプリントに沿って進む試行錯誤しながら進める
結果のあり方答えはひとつ答えはひとつではないこともある
学びのゴール正解にたどりつくこと過程・工夫・表現を大切にする

💬 「正解がひとつじゃない学び」

プログラミング教育では、「みんな同じ答え」ではなく、「みんなちがってみんないい」が大切になります。

動かすスピード、見せ方、効果音など、子ども一人ひとりの工夫や発想がそのまま作品になるのです。

だからこそ、大人が正解を教えるよりも、「どうしたらうまくいくと思う?」と問いかけることが、子どもの思考力を伸ばす第一歩になります。

ポイントまとめ

3-2. 子ども向けプログラミング教材の基本(Scratchを使った学び)

小学生のプログラミング教育で、最もよく使われているのが「Scratch(スクラッチ)」というツールです。

Scratchは、マウス操作だけでプログラミングができるように作られた「ブロック型のプログラミングツール」です。

むずかしい文字や記号を入力しなくても、
「〇歩うごく」「10びょうまつ」「音をならす」などの命令(ブロック)を、
パズルのように組み合わせるだけでプログラムを作ることができます。

この仕組みによって、子どもたちは
👉 試して→失敗して→直して→完成させる
という体験を、ゲーム感覚で自然にくり返すことができるのです。

Scratchの基本エリアと役割

エリア名内容(子どもに教えるときのポイント)
ステージキャラクター(スプライト)が動く画面
スプライト動かすキャラや物(猫・ボールなど)
ブロックパレット命令(ブロック)がならんでいる場所
スクリプトエリアブロックを組み合わせてプログラムを作る場所
緑の旗ボタンプログラムのスタートボタン
赤いボタンプログラムを止めるボタン

💬 「Scratchは世界中の子どもたちの入り口」

Scratchは世界150か国以上で使われていて、公式サイトには子どもたちが作った作品が毎日アップされています。

作品をシェアしたり、他の子の作品を見てまねしたりする「リミックス」という文化もあり、「学びながらつながる」体験ができるのもScratchの魅力です。

ポイントまとめ

3-3. 簡単なプログラムを作ってみよう(キャラクターを動かす)

Scratchの使い方がわかってきたら、いよいよプログラムを作ってみる体験に進みましょう!

ここでは、いちばん基本的な「キャラクター(スプライト)を動かす」プログラムを紹介します。

まずは「ねこ」を右に10歩うごかす、という命令からスタート!

Scratchでは、以下のようなブロックを使って命令を作ります。

🟦「〇歩うごかす」
🟨「〜がクリックされたとき」
🟪「音をならす」
🟧「見た目をかえる」
など

これらを組み合わせると、キャラがうごく・音がでる・話す・止まるなど、いろんな表現ができます。

子どもたちにとっては、自分で作った命令でキャラクターがうごく瞬間が、「できた!」「わかった!」の大きな体験になります。

ブロック例:ネコをうごかす基本プログラム

手順とブロック例説明
① 「緑の旗がクリックされたとき」プログラムのスタート
② 「10歩うごかす」右方向へ10歩キャラが進む
③ 「にゃーの音をならす」動いたあとに音を出す

➡ この3つを順番に並べるだけで、「ネコが歩いて鳴く」プログラムが完成!

💬 「子どもは“動く”と学ぶ」

プログラミングを体験するとき、キャラが動いた・音が出たという反応があるだけで、子どもたちの目がキラキラします。

「試した → できた!」という体験は、自信と達成感を与えるだけでなく、「もっとやってみたい!」という意欲も生み出します。

こうした成功体験の積み重ねが、考える力・工夫する力の土台になります。

ポイントまとめ

3-4. 子どもたちがつまずきやすいポイントと指導のコツ

子どもたちはScratchを使うことで、プログラミングを楽しく体験できます。しかし、やっていく中でつまずきやすいポイントもたくさんあります。

それは「間違えること」ではなく、成長のチャンスとして捉えることが大切です。

以下に、よくあるつまずきポイントと、指導する際のちょっとした声かけや工夫をご紹介します。

よくあるつまずきとそのサポート例

子どもの様子よくある原因指導のコツ
キャラが動かないスタートブロックを入れ忘れている「緑の旗のスタートがついてるか見てみよう!」
動きすぎる・止まらない繰り返しブロックが原因「ずっと動く設定になってるかも。見直そう」
思い通りに動かないブロックの順番がちがう「どの順番で動かしたい?声に出してみよう」
わからなくてあきらめてしまいそう…一人で悩みすぎている「一緒に考えてみよう」「うまくいかないのも大事!」

💬 「“教えすぎない”勇気も大切」

プログラミングの指導で大切なのは、正解をすぐに教えないこと。

「うまくいかない原因」を子ども自身が考えたり、友だちと話し合ったりする中で、思考力・表現力・協働力が育っていきます。

大人の役割は、「考えるヒントを渡すナビゲーター」になることです。

ポイントまとめ