第4章 第3節

適切な画面時間の管理

心と体の健康を保つ時間との付き合い方
🎯 この節を読むと分かること

・年齢別の画面時間の目安が分かる
・画面時間が心身に与える影響を理解できる
・「時間管理」を子どもと一緒にできる方法が分かる
・ゲーム依存・スマホ依存のサインと対応が分かる

🤔
はじめての問い

⏱️ 「何時間まで」だけでは解決しない

「うちの子、ゲームばっかりで困っている」「動画を見出すと止まらない」「夜遅くまで使って朝が起きられない」——画面時間の管理は、ICT教育の最大の悩みのひとつです。

「何時間まで」という数字だけで決めるのは、実は簡単ではありません。本節では、年齢別の目安、健康への影響、家族で取り組む方法を学びます。

💡 覚えておきたい言葉

スクリーンタイム・ 20-20-20ルール・ ゲーム障害(WHO ICD-11)デジタルウェルビーイング

スクリーンタイムとは
テレビ・スマートフォン・タブレット・パソコンなどの画面を見ている時間の合計。WHO等は過剰なスクリーンタイムを避けるよう推奨しています。
ゲーム障害とは
WHO(世界保健機関)が2019年に国際疾病分類(ICD-11)に正式に追加した疾患。ゲームのコントロールができず、ゲームが生活より優先され、学業・仕事・家族・健康に悪影響が出る状態が12か月以上(重症の場合は短期間でも)続くもの。
デジタルウェルビーイングとは
「デジタルとうまく付き合って、健康に・幸せに生きる」ことを目指す考え方。使う時間をコントロールできている感覚・画面の外の世界も大切にできている・使った後に「よかった」と思える状態が目標です。
🏠 家庭で実践する場合

家族みんなで「使わない時間」を作る(食事、就寝前 等)
親自身もスマホの使い過ぎを振り返る
「ながらスマホ」をやめる
子どもと「画面の外の楽しい時間」を意識的に作る

🏫 指導の現場で実践する場合

学校・園で「メディアとの上手な付き合い方」を年複数回扱う
保健の授業で目・姿勢・睡眠を扱う
保護者向けに「家庭での画面時間管理」のお便り
子どもの様子(眠そう・集中力等)を観察し、家庭にフィードバック

📖
基本を知る

⏱️ 年齢別の画面時間の目安

🍼 0〜1歳
WHO推奨
スクリーンメディアを推奨しない
例外
ビデオ通話(祖父母との会話等)は可
👶 2〜4歳
WHO推奨
1時間未満(より少ない方が望ましい)
ポイント
必ず大人と一緒に
質の高い内容を選ぶ
🧒 5〜9歳
目安
1日合計1〜2時間程度、目的のある活動を中心に
ポイント
娯楽と学習のバランス
就寝1時間前は使わない
🎓 10〜12歳
目安
内容・目的次第。本人と相談しながら決める
ポイント
自分でルールを決める練習
使う時間より「何に使うか」が重要

※WHO(2019)は5歳未満の指針を発表。それ以上の年齢については米国小児科学会(AAP)等が「Family Media Plan」として、家族で計画する方式を推奨しています。

💊 画面時間が心身に与える影響と予防策

👁️
視力
近視の進行・ドライアイ / 予防:20-20-20ルール・30cm以上離す・屋外時間の確保
🪑
姿勢
猫背・肩こり・首の負担 / 予防:机・椅子の調整・寝転がらない・休憩
😴
睡眠
寝つきが悪い・睡眠の質低下 / 予防:就寝1時間前は使わない・寝室に持ち込まない(画面への没入による覚醒が主な原因)
🧠
集中力
短い注意力・すぐ飽きる / 予防:「集中して取り組む時間」も意識的に確保
🏃
運動量
外遊びの減少・肥満リスク / 予防:1日60分以上の体を動かす時間
💬
コミュニケーション
直接の対話の減少 / 予防:食事中・家族時間は使わない
💖
精神面
依存・不安・孤立感 / 予防:リアルな関係・体験を大切に

👁️ 20-20-20ルール

💡 目の疲れを防ぐルール(米国眼科学会 AAO 等が提唱)

画面を20分使ったら、20秒間、20フィート(約6メートル)先を見る
意味:目の筋肉をリセットして、ピント調節機能を回復させる
実践のコツ:タイマーをセット・家族みんなで実践・窓の外を見る

⚠️ ゲーム障害のサイン(WHO ICD-11)

⚠️ 次の状態が12か月以上続く(重症の場合はより短期間でも)

・ゲームのコントロールができない(時間・頻度・状況)
・他の生活上の関心事より、ゲームが優先される
・学業・仕事・家族・健康に悪影響が出ていても続ける
→ 気になるサインがあれば、責めずにまず話を聞き、専門家(小児科・精神科)への相談を検討しましょう。

🚀
はじめてみよう

📊
ステップ1:1週間の使用記録
使った時間・場所・アプリ・コンテンツ / 使った後の気分(よかった・つまらなかった等) / 他のことをやる予定だったのに後回しにしたこと → 客観的に「今、どう使っているか」を知る
ルールを作る前に、実態を観察する
👨‍👩‍👧
ステップ2:ファミリーメディアプランを作る
使う時間(起床後・宿題後・就寝前 何時から何時まで) / 使わない時間(食事中・家族時間・就寝前1時間) / 場所・内容・家族の代替活動(読書・外遊び・ボードゲーム)
米国小児科学会(AAP)の「Family Media Plan」を参考に
⚙️
ステップ3:機器の機能を活用する
iOS:スクリーンタイム機能 / Android:Family Link / デジタルウェルビーイング / Windows:ファミリーセーフティ / Nintendo Switch:みまもり Switchアプリ / PlayStation:ファミリー機能
技術的な仕組みをルールの補強に活用
🌿
ステップ4:「使わない時間」の活動を作る
家族での読書時間(みんなで本を読む15分) / 散歩・外遊び・スポーツ / 料理・工作・絵を描く / ボードゲーム・トランプ・将棋 / 地域の活動・友達との遊び
「減らす」だけでなく「代わりに何をするか」を決める

家庭・指導の現場での具体的取り組み

🏠 家庭で実践する場合

家族みんなで「使わない時間」を作る(食事、就寝前 等)
親自身もスマホの使い過ぎを振り返る
「ながらスマホ」をやめる
子どもと「画面の外の楽しい時間」を意識的に作る

🏫 指導の現場で実践する場合

学校・園で「メディアとの上手な付き合い方」を年複数回扱う
保健の授業で目・姿勢・睡眠を扱う
保護者向けに「家庭での画面時間管理」のお便り
子どもの様子(眠そう・集中力等)を観察し、家庭にフィードバック

💼
ケースを見てみよう

🎮
ケース1:小5のゲーム時間の自己管理
「取り上げる」より「自分で決める」

Mさん(小5)は、放課後ずっとオンラインゲームをして、宿題は後回し、就寝時間も遅くなりがちでした。お父さんは「取り上げるか、放置するか」で悩んでいました。

📍 取り組み:まずMさんに「ゲームのどこが面白いか」を聞いた → 「友達と一緒にプレイするのが楽しい」を受け止めた → 家族で「ゲーム時間 vs その他の時間」のバランスを話し合う → Mさん自身が「平日30分、休日90分」を提案 → 時間が来たらMさん自身が終わる練習
・自分でコントロールできるように
・宿題・睡眠の時間が回復
・「ゲームをやってよい時間」が明確で、罪悪感なく楽しめる
・ゲームの楽しさを否定しない→本人が決めた時間は守られやすい
📱
ケース2:6年生「スマホとの付き合い方」授業
「思ったより使ってた」「自分で決めることが大事」

ある小学校で、入学前の6年生対象に「スマホとの付き合い方」授業を実施しました。

📍 授業の流れ:導入:自分のスクリーンタイムを見てみる(事前に確認) → 展開1:1日24時間の使い方を円グラフに → 展開2:「もしスマホがなかったら、その時間で何をする?」を書く → 展開3:依存のサインを学ぶ(WHO ICD-11 ゲーム障害) → まとめ:中学進学後の「自分のルール」を書く
・「思ったより使ってた」「もっと他のことに時間使いたい」
・「自分で決めることが大事と分かった」
・「依存になる前に気づけるサインを覚えた」
・「家でこの話をしてみる」

振り返りチェックリスト

年齢別の画面時間の目安が言える
0-1歳:推奨しない/2-4歳:1時間未満/5歳以上:目的次第
画面時間が心身に与える影響を7領域言える
視力・姿勢・睡眠・集中力・運動量・コミュニケーション・精神面
20-20-20ルールを実践している
20分使ったら・20秒間・20フィート(約6m)先を見る
ゲーム障害のサインを知っている
コントロール不可・ゲーム優先・悪影響が出ても続けるが12か月以上
家族でファミリーメディアプランを作った
使う時間・使わない時間・場所・内容・代替活動を決めた

📚
主要参考文献・指針・法令(第4章)

⚖️ 法令

  • いじめ防止対策推進法(2013年公布、2020年改正)
  • 個人情報の保護に関する法律
  • こども基本法(2023年施行)
  • 児童ポルノ禁止法

🌐 国際指針

  • WHO(2019)『5歳未満の身体活動・座位行動・睡眠に関するガイドライン』
  • WHO(2019)『ICD-11 Gaming Disorder』
  • 国連『子どもの権利条約』第16条(プライバシー)

🏛️ 国・公的機関

  • 文部科学省『いじめ防止対策ポータルサイト』
  • 文部科学省『情報モラル教育ポータルサイト』
  • こども家庭庁『青少年のインターネット利用環境実態調査』
  • 個人情報保護委員会『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』

🎓 医学・教育

  • 米国眼科学会(AAO)『20-20-20ルール』
  • 米国小児科学会(AAP)『Family Media Plan』
  • 日本眼科医会『デジタルデバイスと子どもの目』
  • Common Sense Media『ファミリーメディアプラン』

📞 相談窓口

  • 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(文部科学省・24時間)
  • 子どもの人権110番:0120-007-110(法務省)
  • よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料)
  • 消費者ホットライン:188
  • 警察相談専用電話:#9110
  • インターネット・ホットラインセンター(オンライン):違法・有害情報の通報

※2026年5月時点の情報です。最新情報は各機関の公式サイトでご確認ください。

💡
今日の学びをふりかえろう

🌟 第4章の学習ふりかえり
第4章を通して、最も実践してみたいと思ったことはどれですか?
A
ネットいじめの予防として、今すぐ相談先リストを子どもと一緒に作りたい
B
プライバシーを「自分と他の人を守るもの」として、家族で話し合いたい
C
ファミリーメディアプランを作って、画面時間を家族で管理したい
D
どれも重要で、第4章全体の安全教育を今すぐ実践したいと思った