第2章 第3節

小学校高学年(9-12歳):情報活用と協働

情報を扱う力と、人とつながる力を育てる
🎯 この節を読むと分かること

・高学年に育てたい4つの力(情報・協働・表現・判断)が分かる
・9-12歳に合う活動例が10種類以上見つかる
・SNS・スマホとの距離の取り方が分かる
・「子ども主導」へのシフトの仕方が分かる

🤔
はじめての問い

🎓 小学校高学年とICT

小学校高学年は、論理的な思考が育ち、友達関係も広がる時期です。同時に、SNS・スマートフォンへの興味が高まり、自分の世界を持ち始める時期でもあります。

ICT教育では、「ただ操作できる」を超えて、「情報を探す・選ぶ・使う・伝える」「人と協力する」を本格的に学びます。同時に、ネットの世界でのマナー・安全も、より具体的に学ぶ時期です。

💡 覚えておきたい言葉

情報リテラシー協働学習・ プレゼンテーション・ ファクトチェックデジタルシティズンシップ

情報リテラシーとは
情報を適切に収集・評価・活用・発信する能力。ネット上の情報を「疑う・確かめる」習慣が中心となります。
協働学習とは
子どもたちが協力し合い、互いの得意分野を活かしながら一緒に学習に取り組むこと。共同編集ツール等を活用します。
ファクトチェックとは
情報・発言・記事などが事実かどうかを確かめること。「誰が書いた?」「いつの情報?」「根拠は?」「他の情報源では?」の4つの問いが基本です。
デジタルシティズンシップとは
デジタル社会において責任ある市民として行動するための知識・スキル・態度のこと。オンライン上での適切な行動・プライバシー保護・情報の真偽判断などを含みます。
🏠 家庭で実践する場合

子どもが「これ調べたい」と言ったら一緒に確かめてあげる
「ネットで見た」を「本当?」と聞く文化を作る
子どもが作った作品を、本気でレビューする
中学進学前に「SNSはどうするか」を一度話し合う

🏫 指導の現場で実践する場合

授業に「情報を確かめる」時間を毎月入れる
プレゼン・発表の機会を多く設ける
クラスで「ネットの上手な付き合い方」を年複数回扱う
中学進学前に「これからのデジタルライフ」を考える単元を設ける

📖
基本を知る

💪 高学年に育てたい4つの力(本教材での整理)

🔍
情報を扱う力
探す・選ぶ・確かめる・整理する
代表的な活動:テーマ調べ学習、ファクトチェック
🤝
協働する力
ペア・グループで作る、意見を聞く
代表的な活動:共同編集、グループ発表
🎨
表現する力
文字・写真・動画・音で伝える
代表的な活動:プレゼン、動画作品、ポスター
⚖️
判断する力
正しいか・適切か・自分の意見は何か
代表的な活動:メディア批評、自分の意見を書く

🔍 情報を確かめる4つの問い

誰が書いた?
個人ブログか、公的機関か。発信者の信頼性を確認する
いつの情報?
古い情報は今は違うかもしれない。日付を必ず確認する
根拠は?
「と言われている」ではなく、データや事例はあるか
他の情報源では?
1つの情報だけで判断しない。複数の情報源で確認する

🎯 推奨される活動例(10種類)

🎬
地域を取材した動画作品
情報収集・編集・発信
公開時は肖像権・著作権に配慮
🔎
新聞・ニュースのファクトチェック
情報の真偽を確かめる
簡単な記事から始める
📊
プレゼンテーション制作
考えを構造化して伝える
5分発表をペアで
✏️
共同編集での調べ学習
協力する力
Google ドキュメント等で全員参加
🧱
プログラミング作品(Scratch)
論理思考・創造
迷路ゲーム、クイズ等
📰
デジタル新聞・ブログ
継続的な発信
クラス内限定で安全に
🌐
他校・他地域とのオンライン交流
視野を広げる
事前のルール確認必須
🔬
科学・社会の探究プロジェクト
深い学び
1学期続くテーマ
🎵
動画・音楽の創作
自分の表現
著作権を学ぶ機会に
📺
メディア批評・広告分析
クリティカルシンキング
「なぜこの広告?」と考える

📱 SNS・スマホとの距離の取り方

💡 高学年はまだ「SNSを使わせない」が基本

多くのSNSは13歳以上が利用可能(地域による)なので、原則的にこの時期はまだ「SNSを使わせない」が基本です。ただし、「禁止」を説明するのではなく、「なぜ待つのか」を一緒に考えることが大切です。

  • LINE:12歳以上推奨 — 家族間のみに限定、グループは管理
  • YouTube:13歳以上(YouTube Kidsは別) — 投稿は原則しない、視聴のみ
  • Instagram:13歳以上 — アカウント作成は中学生以降
  • TikTok:13歳以上(地域による) — アカウント作成は中学生以降
  • X(旧Twitter):13歳以上 — アカウント作成は中学生以降

※年齢制限はサービスごとに更新されるので、最新の利用規約を必ず確認しましょう。

🔑 「子ども主導」へのシフト

📱
使うアプリを子どもが選ぶ → 大人が確認
「与える」から「選んでもらう」への移行
📋
ルールを子どもが提案 → 家族・クラスで議論
「決められたルール」から「自分のルール」へ
🎯
作品のテーマを子どもが決める
自己決定の体験が主体性を育てる
⚠️
「任せる」と「放置」は違う
最終的な責任は大人にある。信頼しながらも見守る

🚀
はじめてみよう

🔎
ステップ1:情報を確かめる練習
ニュースやネット記事を題材に、「情報を確かめる4つの問い」を毎週1回練習します。月:気になる情報を1つ選ぶ → 水:4つの問いに答えてみる → 金:もう一度別の情報源で確かめる → 週末:家族・友達と共有
週1回、積み重ねることで習慣になる
🏗️
ステップ2:1学期続くプロジェクトを始める
テーマ例:地域の歴史・家族のルーツ・好きな動物の生態・SDGsの1テーマ。情報を集める → 整理する → 作品にする → 発表する → 振り返る。途中で計画を見直す機会を作ります。
短い活動だけでなく、長く取り組む体験を
📋
ステップ3:ルールを「自分のもの」にする
使う時間・場所・内容を自分で提案 → 大人と合意して書面にする → 守れなかったときの対応も自分で考える → 月1回、自分でルールを見直す時間を持つ
「決められたもの」ではなく「自分のもの」に

家庭・指導の現場での具体的取り組み

🏠 家庭で実践する場合

子どもが「これ調べたい」と言ったら一緒に確かめてあげる
「ネットで見た」を「本当?」と聞く文化を作る
子どもが作った作品を、本気でレビューする
中学進学前に「SNSはどうするか」を一度話し合う

🏫 指導の現場で実践する場合

授業に「情報を確かめる」時間を毎月入れる
プレゼン・発表の機会を多く設ける
クラスで「ネットの上手な付き合い方」を年複数回扱う
中学進学前に「これからのデジタルライフ」を考える単元を設ける

💼
ケースを見てみよう

🏘️
ケース1:5年生の地域探究プロジェクト
ネットだけでは分からない地域の声

ある小学校の5年生クラスで、1学期を通じて「自分の町の今と昔」をテーマにしたデジタル探究プロジェクトを行いました。

📍 プロジェクトの流れ:4月:テーマと班分け、調べ方の練習 → 5月:地域の図書館・郷土資料館への取材、写真撮影 → 6月:高齢者への聞き取り(祖父母・近所の方) → 7月:班ごとに動画・スライドにまとめる → 学期末:保護者・地域の方を招いて発表会
・ネットで調べただけでは分からない、地域の声を直接聞く価値
・情報を確かめる重要性(古い写真の年代、人物の名前等)
・協力する難しさと、できたときの喜び
・発表することで、自分たちの学びが地域に還元される実感
📱
ケース2:6年生のSNSとの距離の取り方ワークショップ
「禁止」ではなく「考えて使う」姿勢を育てる

ある小学校で、6年生対象に「中学進学前にSNSを考える」ワークショップを実施しました。保護者会と連動した取り組みです。

📍 ワークショップの内容:SNSの仕組みと年齢制限の意味を確認 → 実際のトラブル事例を新聞記事から読む → 「もし自分がトラブルに遭ったら誰に話す?」を書く → 「中学になったらどう使う?」を保護者と一緒に話し合う → 家庭ルール案を持ち帰り、家族会議に発展
・「SNS禁止」ではなく「考えて使う」姿勢が育った
・保護者も「子どもが本気で考えていること」を実感
・中学進学後のSNS使用について、家族で対話する文化
・困ったときの相談先が、子どもの中に明確になった

振り返りチェックリスト

高学年に育てたい4つの力を言える
情報を扱う力・協働する力・表現する力・判断する力
情報を確かめる4つの問いを覚えている
誰が?・いつ?・根拠は?・他の情報源では?
9-12歳に合う活動を5つ以上挙げられる
動画作品・ファクトチェック・プレゼン・Scratch・探究プロジェクト等
SNSの年齢制限と高学年への対応が分かる
多くは13歳以上。「禁止」でなく「なぜ待つか」を一緒に考える
「子ども主導」へのシフトを実践できている
「任せる」と「放置」は違う。信頼しながら見守る

📚
主要参考文献・指針(第2章)

🌐 国際指針・調査

  • WHO(2019)『5歳未満の身体活動・座位行動・睡眠に関するガイドライン』
  • OECD『PISA 2022 Results』
  • Common Sense Media『Common Sense Census』(子どものメディア利用調査)

🏛️ 国・公的機関

  • 文部科学省『小学校学習指導要領』(2017年告示、2020年度実施)
  • 文部科学省『プログラミング教育の手引き』
  • 文部科学省『GIGAスクール構想』
  • 文部科学省『教育の情報化に関する手引き』
  • 総務省『情報通信白書』

🛠️ 教材・サービス

  • Scratch(MIT Media Lab)/ ScratchJr(MIT Media Lab・Tufts大学 共同開発)
  • 文部科学省『学習者用デジタル教科書』

📞 相談窓口

  • 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(文部科学省)
  • 子どもの人権110番:0120-007-110(法務省)
  • よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料)
  • 消費者ホットライン:188

※2026年5月時点の情報です。最新情報は各機関の公式サイトでご確認ください。

💡
今日の学びをふりかえろう

高学年のICT活用について学んだことを振り返ってみましょう。

🌟 第2章の学習ふりかえり
第2章を通して学んだ中で、最も実践してみたいと思ったことはどれですか?
A
情報を確かめる4つの問いを、子どもと一緒に毎週練習したい
B
1学期続くプロジェクト型の学びを取り入れたい
C
SNSについて、禁止でなく「なぜ待つか」を一緒に話し合いたい
D
どれも重要で、第2章全体の学びを実践してみたいと思った