第2章 第1節

幼児期(3-6歳):遊びを通した学習

五感の体験を補強する道具として
🎯 この節を読むと分かること

・幼児期のICT活用で大切にすべき5つのポイントが分かる
・3-6歳に合う具体的な活動例が10種類以上見つかる
・「やってよいこと」「もう少し待つこと」が判断できる
・デジタルとアナログを上手につなぐ方法が分かる

🤔
はじめての問い

🌱 3〜6歳の子どもとデジタル

3歳から6歳の子どもにとって、世界は驚きでいっぱいです。砂・水・絵の具・歌・絵本——五感で世界を学ぶ大切な時期です。デジタル機器は、この豊かな体験を「奪う」のでも「置き換える」のでもなく、「広げる」道具として位置づけたいと思います。

WHOの指針(2019)でも、5歳未満は「保護者と一緒に質の高い内容を短時間」が原則とされています。

💡 覚えておきたい言葉

五感を使った遊び親子(共)視聴(co-viewing)・ ごっこ遊び・ デジタル絵本・ おしまいタイム

五感を使った遊びとは
視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚を総合的に使った遊び・体験のこと。幼児期の学びの中心であり、デジタル活動もこの体験を補強・拡張する形で行うことが理想です。
親子(共)視聴(co-viewing)とは
保護者が子どもと一緒に同じ画面を見ること。ただ隣にいるだけでなく、声をかけ・話し合いながら見ることで、学習効果が高まることが研究で確認されています。
デジタル絵本とは
タブレットやスマートフォンで読む絵本。音声読み上げ・効果音・アニメーションが加わるものが多く、文字が読めない幼児でも物語に親しめます。
🏠 家庭で実践する場合

週末に「家族で一緒のICT時間」を作る:祖父母とビデオ通話など
お風呂・食事中・寝る前は「使わない時間」を徹底
子どもの好奇心に応える形でアプリを選ぶ:押し付けない
「あれが見たい」と言ったときに:「いいね、一緒に見ようか」が合言葉

🏫 指導の現場で実践する場合

クラスの活動は「全員で同じ画面を見る・触る」をまず基本に
活動後に必ず「実物・体験」に接続する設計
デジタル機器は「ハレの日」に使うイメージ:毎日でなくてOK
保護者にも「家庭でこんな活動を」を具体的に提案

📖
基本を知る

✨ 幼児期に大切な5つのこと

👨‍👩‍👧
① 大人と一緒に
独りで使わせない。隣で一緒に見て、話して、感想を分かち合う
「これ何だろう?」「お家にもあるかな?」と声をかけながら
⏱️
② 短く区切る
1回10〜20分、合計で1日30〜60分以内
「もっとやりたい」状態で終わるのがベスト
🎯
③ 目的を持って
「動画を見せる」だけでなく、何を体験させたいかを意識する
「キリンの首が長い理由を一緒に調べよう」など
🌿
④ 現実とつなぐ
画面の中で完結させず、実物・体験・会話につなぐ
アプリで動物を見る→動物園で本物に会う→絵を描く
🚫
⑤ 控えるものを知る
暴力的コンテンツ・終わりのない動画・課金ゲームは避ける
SNSや知らない人とつながるアプリも対象外

🎨 推奨される活動例(10種類)

📸
家族の写真を撮る
「自分が撮った」体験、家族とのつながり
撮影だけ。SNS投稿は別の話
🎨
お絵描きアプリ
色や形で表現する楽しさ
実物のクレヨンと併用する
📖
デジタル絵本(読み聞かせ)
物語を聞き、登場人物に共感
親子で同じ画面を見る
🦁
動物・乗り物の図鑑アプリ
本物を見たい気持ちを育てる
アプリ→図鑑→動物園、と発展させる
🎵
音楽・歌のアプリ
リズム感、楽器への興味
実際に体を動かす
🧩
パズル・形遊びアプリ
認識・推論
実物のパズルとも組み合わせる
📹
ビデオ通話(祖父母等)
離れた人とのつながり
短時間、興味のある話題で
📚
ナレーション付き昔話
言葉のリズム、文化
聞きながら絵本も開く
🏃
体を動かす連動アプリ
運動・リズム
畳1畳程度の動けるスペースで
💬
写真の振り返り
出来事を言葉にする
「今日何があった?」の問いかけと一緒に

🌈 デジタルとアナログのつなぎ方

💡 体験の流れをつくる

幼児期の学びは、五感の体験が中心です。デジタルで見たことを、実物の体験につなぐと、両方が豊かになります。

🐘
動物アプリで象を見る
→ 動物園で本物の象に会う → 帰宅後に絵を描く
🌸
お絵描きアプリで桜を描く
→ 公園で本物の桜を見る → 押し花を作る
🍪
料理アプリでケーキ作りを見る
→ 一緒に簡単なクッキーを焼く

🚀
はじめてみよう

👀
ステップ1:5分間の「親子(共)視聴」体験
子どもが好きそうな短い動画やアプリを選び(5分程度)、隣に座って一緒に見ます。途中で「これ何だろう?」と声をかけ、終わったら「何が一番面白かった?」と聞きましょう。画面を閉じてから1〜2分話す時間を作ります。
まずは大人が「一緒に見る」ことに慣れる
ステップ2:「おしまいタイム」の練習
始める前に「タイマーが鳴ったらおしまい」と約束。タイマーは子どもにも見える場所に。鳴ったら「よく頑張ったね」「また明日見ようね」と肯定的に終わります。ぐずっても、決めた時間を守る(一貫性が大切)。
時間が来たら気持ちよく終わる練習
📅
ステップ3:1週間の活動表を作る
月:デジタル絵本15分 / 火:お絵描き20分 / 水:デジタル休み(公園・絵本など) / 木:祖父母とビデオ通話10分 / 金:写真撮影と振り返り15分 / 土日:家族の予定に合わせて
「いつ・何を・どのくらい」を見える化する

家庭・指導の現場での具体的取り組み

🏠 家庭で実践する場合

週末に「家族で一緒のICT時間」を作る(祖父母とビデオ通話など)
お風呂・食事中・寝る前は「使わない時間」を徹底
子どもの好奇心に応える形でアプリを選ぶ(押し付けない)
「あれが見たい」と言ったときに、「いいね、一緒に見ようか」が合言葉

🏫 指導の現場で実践する場合

クラスの活動は「全員で同じ画面を見る・触る」をまず基本に
活動後に必ず「実物・体験」に接続する設計
デジタル機器は「ハレの日」に使うイメージ(毎日でなくてOK)
保護者にも「家庭でこんな活動を」を具体的に提案

💼
ケースを見てみよう

🦒
ケース1:4歳児の動物への興味から始まる活動
デジタルは「入口」、本物の体験がメイン

4歳のEちゃんは動物が大好き。お父さんは「動画ばかり見せたくないけど、興味を伸ばしてあげたい」と考え、デジタルとアナログをつなぐ1週間の計画を立てました。

📍 1週間の活動:月:動物アプリで「キリンの首が長い理由」のアニメを一緒に見る→火:図書館で動物の絵本を借りる→水:絵本を読み聞かせ→木:動物園に行く(実物のキリンに会う)→金:写真を見ながら好きだった動物を描く→土:絵を祖父母にビデオ通話で見せる
・デジタルは「入口」、本物の体験と絵本がメインの学び
・興味の流れに沿って計画すると、子どもの集中力が続く
・「描く」「話す」「見る」が一連の学びになる
・結果として、デジタル時間は短いのに、子どもの満足度が高い
📖
ケース2:年長クラスでのデジタル絵本タイム
紙の絵本との違いを活かした設計

ある幼稚園の年長クラスで、週1回「デジタル絵本タイム」を始めました。先生は、紙の絵本との違いを大切にしながら設計しました。

📍 活動の流れ:先生がスクリーンに絵本を映し、全員で一緒に見る(15分)→音声つきで文字を指でなぞる演出→途中で「次どうなるかな?」と予想させる→読み終わったら、絵を描いたり、お話を演じたり→月末は、同じ絵本の紙版も貸し出し
・音声があるので、文字が読めない子も物語に入りやすい
・全員で同じ画面を見ると「ここ見て!」と共有しやすい
・「もう一回!」のときも、簡単に戻れる
・紙版を貸し出すと、家でも親子で同じ物語を楽しめる

振り返りチェックリスト

幼児期のICT活用5つのポイントを覚えている
大人と一緒に・短く区切る・目的を持って・現実とつなぐ・控えるものを知る
3-6歳に合う活動を5つ以上挙げられる
写真撮影・お絵描き・デジタル絵本・図鑑アプリ・ビデオ通話など
控えたい活動・コンテンツを判断できる
暴力的コンテンツ・終わりのない動画・課金ゲーム・SNSは対象外
デジタルとアナログをつなぐ計画を1つ立てた
アプリ→実物体験→制作・発表の流れを作る
「おしまいタイム」を子どもと約束できた
タイマーを使って、始める前に約束する

💡
今日の学びをふりかえろう

幼児期のICT活用について学んだことを振り返ってみましょう。

🌟 学習のふりかえり
幼児期のICT活用で最も大切だと感じたポイントはどれですか?
A
デジタルは「五感の体験を広げる道具」であり、現実の体験とつなぐことが大切
B
「大人と一緒に・短く・目的を持って」の3つが幼児期の基本
C
「おしまいタイム」を最初から習慣にすることで、健全な使い方が身につく
D
どれも重要で、今すぐ実践できることが見つかった