第1章 第3節

安全で健康的な利用の原則

心と体を守る・トラブルから子どもを守る
🎯 この節を読むと分かること

・身体の健康を守る基本ルール(目・姿勢・睡眠)が分かる
・心の健康を守る基本ルール(時間・内容・関係)が分かる
・ネット・SNSのトラブルから子どもを守る基本が分かる
・困ったときの相談窓口の基本を知っている
・ルールを「禁止」ではなく「一緒に守るもの」として伝えられる

💚
はじめての問い

📖 よくある心配

「子どもがゲームで知らない人と話していたらどうしよう」「夜遅くまで動画を見ていて寝不足が心配」「変な広告が出てきたらどう教える?」——ICT教育を始めると、必ず安全と健康の心配が出てきます。

本節では、3級として「これだけは知っておいてほしい」基本ルールを学びます。完璧を目指すのではなく、「大事なポイントを家族・クラスで共有する」ことが目標です。

💡 覚えておきたい言葉

スクリーンタイム・ 20-20-20ルール・就寝前のスクリーン使用と睡眠・ ペアレンタルコントロール・ 情報モラル

スクリーンタイムとは
テレビ・スマートフォン・タブレット・パソコンなどの画面を見ている時間の合計。WHO等は過剰なスクリーンタイムを避けるよう推奨しています。
ペアレンタルコントロールとは
保護者が子どもの機器利用を管理・制限できる機能。使用時間の制限、特定コンテンツのブロック、利用履歴の確認などができます。iOSのスクリーンタイム、AndroidのFamily Linkなどが代表例。
🏠 家庭で実践する場合

毎日の観察:子どもの表情、姿勢、疲労のサインを見つける
親子の対話:「今日は疲れてない?」など気軽に聞いてみる
環境づくり:明るさや座り方を一緒に調整
早めの対応:「何か違うな」と感じたらすぐに相談

🏫 指導の現場で実践する場合

授業設計:短時間集中型の活動を組み合わせる
環境配慮:すべての子どもが見やすい・使いやすい環境
個別サポート:一人ひとりの特性に応じた配慮
家庭連携:保護者と健康状態の情報を共有

📖
基本を知る

🦴 身体を守る3つの基本

👁️
① 目を守る
画面から30センチ以上離す・部屋を明るくして使う
20-20-20ルール:20分使ったら、20秒間、遠く(約6m先)を見る
20-20-20ルールとは
米国眼科学会(AAO)等が提唱。20分画面を見たら、20フィート(約6メートル)先を20秒間見て目をリラックスさせます。
🪑
② 姿勢を守る
机と椅子の高さを合わせる・寝転がって長時間使わない
こまめに立ち上がる、ストレッチをする
😴
③ 睡眠を守る
就寝1時間前は使わない・寝室にデジタル機器を持ち込まない
コンテンツへの没入による覚醒・興奮が睡眠を妨げます。ブルーライト自体の影響は科学的に確認されていません(Cochrane Review 2023)

💭 心を守る3つの基本

⏱️
① 時間を守る
使う時間と、使わない時間(食事・家族の時間・寝る前)をはっきり分ける
「あと10分」のキリのよい区切りを設ける・時間が来たら終わる練習を積む
🎬
② 内容を選ぶ
年齢に合った内容を選ぶ(レーティング表示を確認)
暴力的・性的な内容は避ける(ペアレンタルコントロールを設定)・見て気分が悪くなるものはやめる
👥
③ 人とつながる
デジタルで完結せず、家族・友達と直接話す時間を持つ
ネット上の知らない人とは話さない・困ったときは必ず大人に相談する

🛡️ ネット・SNSのトラブルと対処法

🔐
個人情報の漏れ
【予防】名前・住所・学校をネットに書かない教え / 【対応】すぐ大人に話す、画面を保存、相手をブロック
👤
知らない人との接触
【予防】ゲーム内・SNS内の見知らぬ人との交流を制限 / 【対応】やり取りをやめる、大人に相談、必要なら警察
💬
ネットいじめ
【予防】目撃したら止める・大人に言う教え / 【対応】スクリーンショットを保存、学校・家庭で対応
💸
課金トラブル
【予防】クレジット情報は子どもに教えない、決済時はPIN必須 / 【対応】消費者ホットライン188に相談
⚠️
不適切な広告・画像
【予防】フィルタリング設定、見たら閉じる教え / 【対応】履歴を保存、大人に相談、設定を見直す
個人情報とは
特定の個人を識別できる情報のこと。氏名、住所、電話番号、学校名、生年月日、顔写真などが含まれます。インターネット上では特に慎重に扱う必要があります。

📱 SNS・アプリの年齢制限

  • LINE:12歳以上推奨(年齢確認が必要なケースあり)
  • YouTube:13歳以上(YouTube Kidsは別アプリ)
  • Instagram:13歳以上
  • TikTok:13歳以上(地域による)
  • X(旧Twitter):13歳以上

※年齢制限はサービスごとに変わる可能性があるため、利用前に必ず最新の規約を確認してください。

🚀
はじめてみよう

3つのステップで、安全・健康な利用の仕組みを家庭・教室に作りましょう。

📋
ステップ1:「3つの基本ルール」を共有
身体・心・トラブル予防の各項目から最も大事なものを1つずつ選び、3つのルールとして家族・クラスで共有します。
身体:「就寝1時間前は使わない」/心:「食事中は使わない」/トラブル予防:「知らない人とのやり取りは大人に話す」
⚙️
ステップ2:ペアレンタルコントロールを設定
子どもが使う機器に、確認できる範囲で機能制限をかけます。
iOS:スクリーンタイム設定 / Android:Family Link / Windows:ファミリーセーフティ / 各種ゲーム機:ペアレンタルコントロール機能
📞
ステップ3:相談窓口を可視化する
「困ったらここに電話」のリストを子どもと一緒に作って貼っておきます。どの窓口も子ども本人・保護者・指導者が利用できます。
24時間子供SOSダイヤル・チャイルドライン・消費者ホットライン188

家庭・指導の現場での具体的取り組み

🏠 家庭で実践する場合

家族みんなで「我が家のICTルール」を紙に書いて貼る
親自身も同じルールを守る(食事中スマホを見ない等)
1か月に一度、ルールがうまくいっているか家族会議
子どもが「これ大丈夫?」と聞いてきたら、叱らずに一緒に考える

🏫 指導の現場で実践する場合

クラス・園のICTルールを児童・保護者と共有
年度初めに「困ったら相談する」を伝える時間を作る
いじめ・トラブルの早期発見のための定期アンケート
公的窓口の連絡先を教室・お便りに掲載

💼
ケースを見てみよう

📱
ケース1:寝室のスマホ問題
「取り上げる」より「家族で共有するルール」

Cさん(小学5年生)は、寝室にスマホを持ち込んで消灯後も動画を見ていました。お父さんは「成績も少し落ちてきた。でも、いきなり取り上げると喧嘩になる」と悩んでいました。

・消灯後も動画を見て慢性的な寝不足
・成績が少し落ちてきた
・「取り上げると喧嘩になる」で手が出せない
📍 対応のステップ:家族会議で「寝室に持ち込まないルール」を提案→「夜遅くまで使うと目・睡眠・成績にどう影響するか」を一緒に調べる→「寝る1時間前は家族の充電エリアに置く」を家族全員で試す→お父さん・お母さんも同じルールを守る
・「取り上げる」より「ルールを家族で共有」
・大人が同じことをしないと、子どもは納得しない
・根拠(健康・睡眠)を一緒に学ぶと本人も納得しやすい
🎮
ケース2:知らない人からのフレンド申請
「相談してくれた」ことをまず認める

Dさん(小学6年生)が、オンラインゲーム内で「君、上手だね。フレンドにならない?」と知らない人からメッセージをもらいました。Dさんは嬉しくなって、お母さんに見せました。

📍 対応のポイント:お母さんは「教えてくれてありがとう」とまず褒める→「相手は本当に同じ年の子か分からない」を一緒に考える→「フレンドにならない・無視する・必要ならゲーム会社に通報」を選ぶ→「次に同じことが起きたらどうするか」をリハーサル
・「相談してくれた」ことをまず認める
・「あなたを疑っているのではなく、相手が分からない」と伝える
・対応を一緒に選ぶことで、本人の判断力が育つ
・「次にどうするか」をリハーサルすると子どもは安心する

振り返りチェックリスト

身体・心・トラブル予防の3つの基本がそれぞれ言える
目/姿勢/睡眠 / 時間/内容/人とつながる / 個人情報/接触/課金等
家庭・教室の3つの基本ルールを共有できた
身体・心・トラブル予防から1つずつ選んで共有
ペアレンタルコントロールを設定できた
iOS / Android / Windows それぞれの設定方法を確認
相談窓口リストを子どもと共有できた
「困ったらここに電話」のリストを貼った
「禁止」より「一緒に守る」の姿勢で伝えられる
根拠を一緒に学ぶことで、子ども自身が納得して守れるようになる

📚
主要参考文献・公的指針(第1章)

本章は国・国際機関の公的指針を主要な根拠としています。さらに学びたい方は各機関のサイトで最新情報をご確認ください。

🌐 国際指針

  • WHO(2019)『5歳未満の身体活動・座位行動・睡眠に関するガイドライン』
  • OECD『PISA 2022 Results』(情報通信技術と学習の関係)
  • 米国眼科学会(AAO)『20-20-20ルール』
  • 米国小児科学会(AAP)『Media and Children』指針

🏛️ 国・公的機関

  • 文部科学省『GIGAスクール構想』(2019年〜、2024年第二期)
  • 文部科学省『教育の情報化に関する手引き』
  • こども家庭庁『青少年のインターネット利用環境実態調査』
  • 総務省『国民のための情報セキュリティサイト』
  • 消費者庁『子どものデジタル消費者教育』

📞 子ども・保護者・指導者が使える公的窓口

  • 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(文部科学省)
  • 子どもの人権110番:0120-007-110(法務省)
  • よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料)
  • 消費者ホットライン:188(消費者庁・国民生活センター)
  • 警察相談専用電話:#9110

どの窓口も、子ども本人・保護者・指導者が利用できます。困ったら一人で抱え込まず、まず電話を。
※2026年5月時点の情報です。最新情報は各機関の公式サイトでご確認ください。

💡
今日の学びをふりかえろう

健康的で安全なデジタル生活について学んだことを振り返ってみましょう。

🌟 第1章の学習ふりかえり
第1章を通して学んだ中で、最も実践してみたいと思ったことはどれですか?
A
家族でデジタルルールを作って、健康的にICTを活用したい
B
20-20-20ルールなど、体を大切にした使い方を実践したい
C
個人情報保護やトラブル対処法を子どもと一緒に確認したい
D
すべてが大切で、家族みんなで安心なデジタル生活を作りたい