CHAPTER 03

小学校高学年(9-12歳)のICT活用

情報活用と協働で広がる学びの可能性

🎓
高学年の学びの特徴と可能性

📖 ゆうき君(11歳)の調べ学習プロジェクト

5年生のゆうき君は「地球温暖化について調べよう」という授業で困っていました。本では難しい言葉ばかりで理解できません。そこで先生が「動画やグラフも使って調べてみよう」と提案してくれました。

ゆうき君は動画で分かりやすい説明を見つけ、グラフで気温の変化を確認し、友達と役割分担をして発表資料を作りました。「いろんな方法で調べると、難しいことも分かるようになる!」と発見しました。

💡 小学校高学年(9-12歳)の特徴

物事を深く考えられるようになり、自分で調べて、まとめて、発表することができるようになります。友達と協力して一つの課題に取り組むことも得意になります。集中できる時間も30-45分程度に伸び、計画的に学習を進められるようになります。

📚 4-5年生の特徴
情報活用の基礎を身につける
インターネットで調べることができるようになり、見つけた情報をまとめて発表する力がつきます。友達と協力する活動も楽しめます。
この時期の特徴
インターネット検索ができる
情報をまとめて整理できる
プレゼンテーションが作れる
友達と役割分担ができる
役割分担とは
チームや集団で作業を行う際に、各メンバーが異なる責任や業務を担うこと。小学校高学年では、個人の得意分野や興味関心に応じて適切な役割を分担することで、効果的な協働学習が実現され、責任感や協調性、リーダーシップなどの社会性も育成される。
おすすめ活動
• 興味のあるテーマの調べ学習
• 写真や図を使った発表資料作り
• 友達との共同研究プロジェクト
• 簡単なプログラミング体験
調べ学習とは
児童が自ら課題を設定し、様々な情報源を活用して調査・研究する学習活動。情報収集、整理・分析、まとめ、発表までの一連のプロセスを通じて、情報活用能力、問題解決能力、表現力、主体的な学習態度を総合的に育成する重要な学習方法。
🌟 6年生の特徴
高度な情報活用と協働
複数の情報源を比較して考えたり、グループで計画的にプロジェクトを進めたりできるようになります。中学校への準備期間でもあります。
この時期の特徴
情報の信頼性を判断できる
論理的に考えて説明できる
リーダーシップを発揮できる
責任を持って活動できる
情報の信頼性とは
情報がどの程度正確で信頼できるかを示す度合い。情報源の権威性、情報の新しさ、客観性、検証可能性などを基準に判断する。小学校高学年では、複数の情報源との比較、発信者の確認、更新日時の確認などの基本的な判断スキルを身につけることが重要。
おすすめ活動
• 社会問題の多角的調査
• 動画制作による情報発信
• プログラミングでの問題解決
• 地域課題の提案プロジェクト
🏠 家庭でのサポートのコツ

主体性を尊重:子どもの興味を大切にし、調べたいことを一緒に見つける
情報の見方を教える:「この情報は正しいかな?」と一緒に考える習慣
発表の機会を作る:家族の前で調べたことを発表する時間
失敗を恐れない環境:うまくいかなくても「挑戦が大切」と支える

🏫 授業での指導ポイント

課題設定:子どもたちが興味を持てる身近で具体的なテーマ
段階的指導:情報活用の手順を細かく分けて丁寧に指導
協働学習:異なる得意分野を持つ子どもたちでグループ編成
情報モラル:著作権や個人情報保護を分かりやすく指導

協働学習とは
複数の学習者が共通の目標に向かって互いに協力し合いながら学習する教育手法。単なる共同作業ではなく、個人の学習と集団の学習が相互に高め合う関係を築き、対話や議論を通じて深い理解と問題解決能力、社会性を同時に育成する学習方法。

🔍
情報を上手に活用する方法

高学年になると、自分で情報を見つけて、整理して、活用する力が大切になります。インターネットには様々な情報があるので、正しい情報を選ぶ目を養いましょう。

🔍
さくらちゃん(10歳)の情報整理術
たくさんの情報をうまくまとめる工夫

さくらちゃんは「日本の食文化」について調べていましたが、情報が多すぎて混乱していました。

📊 情報整理の工夫:先生が「地域別」「時代別」「料理の種類別」に分けて整理する方法を教えてくれました。カラフルな付箋を使って情報を分類し、最後に一つの資料にまとめることができました。「整理すると、こんなに分かりやすくなるんだ!」と感動していました。

今では、さくらちゃんは調べ学習の達人として、友達にコツを教えています。

情報を分類とは
収集した複数の情報を、一定の基準や観点に従って整理し、カテゴリーごとに分けること。時系列、地域別、テーマ別、重要度別など様々な分類方法があり、情報の関係性を明確にし、理解を深めるとともに、効果的な活用を可能にする情報処理の基本スキル。
🔍
情報を集める
適切なキーワードでインターネット検索し、信頼できる情報源を見つける
学校のサイト、図書館、公的機関の情報
📊
情報を整理する
集めた情報を分類し、重要なポイントを見つけて整理する
表やグラフ、マインドマップの活用
マインドマップとは
中心にメインテーマを置き、そこから放射状に関連する情報やアイデアを枝分かれさせて視覚的に整理する思考ツール。情報の関係性や構造を直感的に理解でき、記憶の定着や新しいアイデアの創出にも効果的。小学校高学年の情報整理や発想法として活用される。
📤
情報を発信する
整理した情報を相手に分かりやすく伝える方法を工夫する
プレゼンテーション、レポート、動画
🤔
検索してもうまく見つからない時は?
キーワードを変えたり、複数の言葉を組み合わせて検索
情報が正しいかわからない時は?
複数のサイトで同じ情報があるか確認する
😰
情報が多すぎて混乱した時は?
テーマごとに分けて、少しずつ整理していく
😅
発表がうまくできない時は?
図や写真を多く使って、視覚的に分かりやすくする
🏠 家庭での情報活用サポート

一緒に検索:最初は一緒にインターネット検索をして、コツを教える
情報の見分け方:「これは本当かな?」と一緒に考える習慣
整理の手伝い:付箋やノートを使った情報整理のお手伝い
発表練習:家族の前で発表の練習をして、アドバイスをする

🏫 授業での情報活用指導

検索スキル:効果的なキーワードの選び方を具体例で指導
情報の信頼性:公的機関と個人サイトの違いなど分かりやすく説明
整理方法:表、グラフ、マインドマップなど様々な手法を紹介
著作権指導:引用の方法や写真の使い方を具体的に指導

🤝
友達と協力して学ぶ楽しさ

高学年になると、友達と協力して一つの目標に向かって取り組むことができるようになります。お互いの得意なことを活かしながら、より良い成果を作り上げましょう。

🤝
6年1組の地域紹介プロジェクト
みんなで作り上げた素晴らしい成果

6年1組では「地域の魅力を発信しよう」というプロジェクト学習に取り組みました。最初はどうやって進めるか迷っていました。

👥 協働の成果:写真が得意なたけし君、文章が上手なみなちゃん、動画編集ができるゆうた君、発表が得意なあやかちゃんが役割分担。3ヶ月かけて地域の魅力を紹介する動画を完成させ、地域の人たちにも喜んでもらいました。

「一人ではできないことも、みんなでやればできる!」と全員が実感したプロジェクトでした。

プロジェクト学習とは
実際の問題や課題を解決するために、児童が主体的に計画を立て、調査・研究・制作などの活動を長期間にわたって行う学習方法。知識の暗記ではなく、問題解決能力、創造力、協働性、責任感などの21世紀型スキルを総合的に育成する効果的な教育アプローチ。
🎥
動画制作プロジェクト
企画、撮影、編集、発表を役割分担して、チームで一つの動画作品を完成させます。
学校紹介、地域の魅力発信、環境問題の啓発
📰
デジタル新聞作成
記事作成、写真撮影、レイアウト、編集を分担して、クラス新聞やテーマ新聞を作ります。
クラス新聞、運動会特集、修学旅行報告
🖥️
ウェブサイト制作
調べた内容をウェブサイトにまとめ、みんなで情報を共有できる形にします。
研究発表サイト、学校案内、趣味紹介
🎮
プログラミング作品
簡単なゲームやアニメーションを協力して作り、プログラミング的思考を体験します。
クイズゲーム、物語アニメ、計算ゲーム
プログラミング的思考とは
問題を分解し、パターンを見つけ、抽象化して、順序立てて解決策を考える思考法。コンピュータープログラミングの基本的な考え方だが、日常生活の様々な問題解決にも応用できる論理的思考力。小学校教育では、プログラミング技術の習得よりも、この思考力の育成を重視している。
📊
データ分析プロジェクト
アンケートを取ったり、データを集めたりして、グラフにまとめて発表します。
学校生活調査、地域の変化、環境調査
データ分析とは
収集したデータを整理・分類し、パターンや傾向を見つけ出し、意味のある情報や知見を導き出す活動。小学校では、アンケート結果のグラフ化、統計的な比較、傾向の読み取りなど基本的な分析スキルを学び、データに基づく客観的な判断力を育成する。
🌍
社会課題解決提案
地域や社会の問題について調べ、解決策を考えて提案書を作成します。
ゴミ問題対策、高齢者支援、安全対策
😔
意見が合わない時は?
お互いの考えを聞いて、良い部分を組み合わせる
😰
役割分担がうまくいかない時は?
得意なことと苦手なことを正直に話し合う
時間内に終わらない時は?
優先順位を決めて、大切な部分から進める
🤝
チームワークを良くするには?
お互いの頑張りを認めて、感謝の気持ちを伝える
🏠 家庭での協働学習サポート

友達との交流:安全にオンラインで友達と学習できる環境を整える
役割の理解:子どもの得意分野を一緒に見つけて伸ばしてあげる
進捗の確認:プロジェクトの進み具合を聞いて、必要に応じてサポート
成果の共有:完成した作品を家族で鑑賞し、頑張りを認める

🏫 授業での協働学習指導

グループ編成:異なる得意分野を持つ児童でバランス良く編成
役割分担:全員が貢献できる明確な役割と責任を設定
進行管理:定期的に進捗を確認し、必要に応じて軌道修正
評価方法:個人の成長とチームへの貢献の両方を評価

進行管理とは
プロジェクトや学習活動が計画通りに進むよう、スケジュール、作業内容、役割分担、成果物の質などを定期的に確認・調整する活動。小学校高学年では、児童自身が進行管理の意識を持ち、計画性と責任感を育成するとともに、教師も適切なタイミングで指導・支援を行う重要なスキル。

💡
第2章全体をふりかえろう

年齢別ICT活用について学んだことを振り返ってみましょう。

🌟 第2章全体の学習ふりかえり
幼児期から高学年まで、年齢別ICT活用で最も大切だと感じたことはどれですか?
A
一人ひとりの発達段階に合わせて、無理なく段階的に進めること
B
基本操作から情報活用まで、楽しみながら実践的に学ぶこと
C
友達との協働を通じて、お互いの良さを活かし合うこと
D
すべてが重要で、年齢に応じたICT活用を総合的に支援したい