CHAPTER 02

小学校低学年(6-9歳)のICT活用

基本操作と創作活動で広がる学びの世界

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小学校低学年の特徴と目標

📖 りょうた君(7歳)のマウス練習体験

小学1年生のりょうた君は、初めてマウスを触ったとき、クリックするたびに手がぷるぷる震えていました。「うまくできない」と泣きそうになったとき、先生が「大丈夫、みんな最初はそうだよ。ゆっくりでいいからね」と声をかけてくれました。

3ヶ月後、りょうた君は自分でファイルを開いて、お絵描きソフトで動物の絵を上手に描けるようになりました。「できた!」の積み重ねが、子どもの自信と意欲を育てます

💡 小学校低学年(6-9歳)の特徴

基本的な読み書きや計算を覚える大切な時期です。集中できる時間は20-30分程度で、具体的で分かりやすいことから学んでいきます。「やってみたい!」という気持ちを大切にしながら、少しずつできることを増やしていくことが重要です。

📝 1-2年生の特徴
基本操作を覚える時期
マウスやキーボードの基本的な使い方を覚えます。ひらがなや簡単な漢字が分かるようになり、短い文章を作れます。
この時期の特徴
マウスの動きに慣れてくる
ひらがなでの文字入力ができる
簡単なルールを理解できる
作品を作ることに興味を持つ
文字入力とは
キーボードを使ってコンピューターに文字を入力すること。小学校低学年では、ひらがな入力から始めて、慣れてきたらローマ字入力に移行することが一般的。正しい指の使い方(タッチタイピングの基礎)を身につけることで、将来的な情報活用能力の基盤を形成する。
おすすめ活動
• マウスを使ったクリックゲーム
• ひらがなタイピング練習
• 簡単なお絵描きソフト
• 写真を見ながらお話し作り
🎨 3年生の特徴
創作活動が本格化
基本操作に慣れて、自分なりの作品を作りたがります。友達と協力する活動も楽しめるようになります。
この時期の特徴
ファイル操作ができるようになる
漢字も混じった文章が書ける
友達と協力して作品を作れる
計画を立てて取り組める
ファイル操作とは
コンピューター上でファイルを保存、開く、整理する基本的な操作。作品の保存や読み込み、フォルダでの整理などが含まれる。小学校低学年では、自分の作品を適切に管理する習慣を身につけることで、デジタル情報の整理能力と責任感を育成する重要なスキル。
おすすめ活動
• デジタル絵日記の作成
• 簡単なプレゼンテーション
• 調べ学習とまとめ作り
• 友達との共同制作
🏠 家庭でのサポートのコツ

ゆっくり教える:急がせず、子どものペースに合わせて丁寧に
一緒にやる:最初は必ず隣に座って一緒に操作する
小さな成功を褒める:「マウスが上手に動かせたね」など具体的に褒める
無理強いしない:嫌がるときは休憩して、楽しい気持ちで続ける

🏫 授業での指導ポイント

段階的指導:一度に多くを教えず、一つずつ確実に習得
個別サポート:理解度の差に応じた個別の声かけと支援
協働学習:得意な子が苦手な子を教える機会を作る
安全管理:機器の正しい使い方と情報モラルの基礎指導

段階的指導とは
学習者の理解度や能力に応じて、小さなステップに分けて段階的に指導する教育方法。小学校低学年のICT教育では、複雑な操作を細かく分解し、一つずつ確実に習得させることで、子どもの自信と技能を着実に育成する効果的なアプローチ。

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楽しく身につける基本操作

小学校低学年では、楽しみながら基本操作を覚えることが大切です。無理に急がず、一人ひとりのペースに合わせて進めましょう。

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あかりちゃん(8歳)のタイピング挑戦
ローマ字が分からなくても大丈夫

あかりちゃんはローマ字が分からなくて、「タイピングできない」と困っていました。そこで先生が「ひらがなキーボード」を教えてくれました。

💡 段階的学習:最初はひらがなで文字入力を覚え、慣れてからローマ字に挑戦。3ヶ月後には「あかりです。こんにちは。」と自分で文章が打てるようになりました。「できた時の嬉しそうな顔は忘れられません」と担任の先生も話しています。

今では、あかりちゃんは週に一回、短い日記をタイピングで書いています。

ひらがなキーボードとは
キーボード上の各キーに、ひらがなが表示されている入力方式。ローマ字を覚えていない小学校低学年の児童でも、直感的に文字入力ができる。ひらがなの位置を覚えることで指の動きに慣れ、将来的なローマ字入力への移行がスムーズになる教育的効果もある。
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マウス操作
クリック、ダブルクリック、ドラッグなどの基本操作
ゲームを通して楽しく覚える
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文字入力
ひらがな、カタカナ、簡単な漢字の入力
短い文章から始めて徐々に長く
📁
ファイル操作
作品の保存と開く操作、フォルダの使い方
自分の作品フォルダを作る
😰
マウスがうまく動かない時は?
手首を机に置いて、指先でゆっくり動かすよう教える
🤔
文字が見つからない時は?
五十音表を見せながら、一緒に探してあげる
😢
作品が消えてしまった時は?
「大丈夫、もう一回作ろう」と励まし、保存の大切さを教える
疲れてきた時は?
無理をせず休憩し、「また今度やろうね」と声をかける
🏠 家庭での基本操作練習

環境づくり:机と椅子の高さを調整し、正しい姿勢で操作できるように
時間管理:15-20分程度の短時間で区切り、集中力を保つ
褒め方:「○○ができるようになったね」と具体的に成長を認める
忍耐力:子どもより親の方が焦らず、ゆっくり見守る

🏫 授業での基本操作指導

デモンストレーション:大画面で手の動きも含めて分かりやすく示す
ペア学習:操作に慣れた子と一緒に練習する機会を作る
進度管理:一人ひとりの習得状況を把握し、個別にサポート
成果記録:小さな成長も記録し、保護者と共有する

ペア学習とは
2人の児童がペアになって互いに教え合いながら学習する協働学習の手法。ICT教育では、操作に慣れた子どもが苦手な子どもをサポートすることで、教える側も学ぶ側も学習効果が高まる。社会性やコミュニケーション能力の育成にも効果的。

🎨
創作活動で表現する楽しさ

基本操作に慣れてきたら、自分なりの作品作りにチャレンジしましょう。完璧を求めず、子どもの創造力と表現力を大切にします。

📖
たくみ君(9歳)の絵日記プロジェクト
文字と絵で表現する楽しさ

たくみ君は文章を書くのが苦手でしたが、写真と絵を組み合わせたデジタル絵日記を始めました。

🎨 多様な表現:「今日は公園に行きました」の文と、自分で撮った写真、お絵描きソフトで描いた犬の絵を組み合わせました。友達に見せると「すごい!」と褒められ、たくみ君は自信を持って続けられるようになりました。

半年後、たくみ君の絵日記は学校で一番人気の作品になりました。

デジタル絵日記とは
コンピューターやタブレットを使って作成する、文章・写真・イラストなどを組み合わせた日記。従来の紙の絵日記と比べて、色彩豊かな表現や音声・動画の追加も可能で、子どもの多様な表現力と創造性を育む効果的な学習活動。
🎨
デジタルお絵描き
様々な色や筆で自由に絵を描きます。間違えても簡単に直せるので、のびのびと表現できます。
好きな動物、家族の絵、想像の世界
📝
簡単な文章作り
短い日記や感想文を書きます。写真やイラストと組み合わせると、楽しい作品になります。
今日の出来事、好きな食べ物の紹介
📸
写真を使った作品
撮った写真に文字や絵を加えて、オリジナルの作品を作ります。家族や友達との思い出作りにも。
学校生活アルバム、季節の変化記録
🎵
音を使った表現
音楽を作ったり、音声を録音したりして、聴く人を楽しませる作品を作ります。
好きな歌の録音、オリジナル効果音
📊
簡単なプレゼン
調べたことや自分の好きなものを、スライドを使って友達に紹介します。
好きな本の紹介、ペットの自慢
🤝
友達との共同制作
友達と役割分担をして、一つの作品を完成させます。協力する楽しさを学べます。
クラス新聞、運動会の振り返り動画
共同制作とは
複数の児童が協力して一つの作品を完成させる学習活動。役割分担、意見調整、進行管理などを通じて、協働性、コミュニケーション能力、責任感を育成。ICT活用により、従来よりも効率的で創造的な共同制作が可能になる。
🏠 家庭での創作活動サポート

材料準備:写真、絵の具、音楽など、創作に使える素材を一緒に集める
作品保存:完成した作品はしっかり保存し、成長の記録として残す
発表機会:家族の前で作品を紹介する時間を作る
褒める視点:技術より工夫やアイデアを褒めて自信を育てる

🏫 授業での創作活動指導

テーマ設定:子どもたちの興味に合った、取り組みやすいテーマを選ぶ
技術指導:創作に必要な最低限の技術を分かりやすく教える
相互鑑賞:お互いの作品を見合って、良いところを見つける活動
記録・評価:完成度より取り組む姿勢や工夫を評価する

📚
各教科と組み合わせた活用

ICTは特別な道具ではなく、日常の学習をより楽しく、分かりやすくするお手伝い道具です。各教科と組み合わせることで、学習効果が高まります。

📖
国語との連携
文章を書いたり、音読を録音したり、物語を作ったりします
デジタル作文、音読発表、創作物語
🔢
算数との連携
グラフを作ったり、図形を描いたり、計算ゲームをしたりします
測定記録、図形作成、計算練習
🌱
生活科との連携
観察記録や調べ学習、町探検の発表などに活用します
植物観察、地域調べ、季節の変化記録
📝
作文が苦手な子には?
写真や絵と組み合わせて、短い文から始める
📐
図形が描けない時は?
デジタルツールできれいな図形を作り、達成感を味わう
🔍
調べ学習で迷った時は?
一緒に検索キーワードを考え、適切なサイトを選ぶ
検索キーワードとは
インターネットで情報を探すときに検索エンジンに入力する言葉や単語。小学校低学年では、調べたいことを適切なキーワードで表現する力を育てることで、効果的な情報収集能力と論理的思考力を身につけることができる。
🎯
発表が恥ずかしい時は?
動画録画や音声録音で、自分のペースで発表練習
🏠 家庭学習でのICT活用

宿題サポート:調べ学習やレポート作成で適切な検索方法を教える
復習ツール:学習アプリを使って楽しく復習する時間を作る
興味拡張:子どもの関心事を深めるための調べ学習支援
学校連携:学校での学習内容と家庭での活動を連携させる

🏫 教科連携での活用ポイント

学習目標明確化:ICT活用が学習目標達成にどう役立つかを明確にする
段階的導入:教科学習の流れに自然にICTを組み込む
個別対応:理解度や習熟度に応じた個別サポートを提供
評価方法:ICT活用を含めた多面的な評価方法を工夫する

多面的な評価とは
従来のテスト結果だけでなく、学習過程、創作物、協働性、情報活用能力など複数の観点から児童の成長を評価する方法。ICT活用により、作品制作過程や協働活動の記録も可能になり、より包括的で公正な評価が実現できる。

💡
今日の学びをふりかえろう

小学校低学年のICT活用について学んだことを振り返ってみましょう。

🌟 学習のふりかえり
小学校低学年のICT活用で最も重要だと感じたことはどれですか?
A
基本操作を急がず、子どものペースに合わせてゆっくり教えること
B
創作活動を通じて、子どもの表現力と創造力を育てること
C
各教科と組み合わせて、学習をより楽しく効果的にすること
D
すべてが大切で、子どもの成長段階に応じて総合的に支援したい