CHAPTER 02

学習上の困りごとへの実践的対応

子ども一人ひとりの学びを支える指導者になろう

🌱
学習の困りごとは成長のサイン

📖 佐藤先生のクラスで起きた変化

4年3組の佐藤先生のクラスでは、最近様々な学習の困りごとが表面化してきました。「タブレットの課題をやりたくない」と言うゆうた君、「みんなについていけない」と不安がるみおちゃん、「○○さんが邪魔をするから集中できない」と訴えるあきらちゃん。

以前なら「頑張りなさい」で終わってしまいがちな佐藤先生でしたが、ICT教育を深く学ぶにつれて気づきました。「これらの困りごとは、子どもたちからの大切なサイン。一人ひとりに合った学び方を見つけるチャンス」

そこで佐藤先生は、それぞれの困りごとの背景を丁寧に聞き取り、個別の対応策を考えることにしました。

子どもたちの「困った」は、より良い学習環境を作るための出発点なのです。

💡 2級で身につける学習支援の実践力

学習上の困りごとは、子ども一人ひとりの「個性」「特性」「成長過程」を教えてくれる貴重な情報源です。表面的な対症療法ではなく、根本的な原因を理解し、その子に最適な学習環境と方法を提供する技術を身につけましょう。

🔥
やる気が続かない時の動機づけ直し

「最初は楽しそうだったのに...」子どものやる気が続かない時の背景を理解し、再び学習への意欲を引き出す方法を学びましょう。

👦
れん君(8歳)の「やる気復活」プロジェクト
飽きから再び夢中へ

プログラミング学習を楽しそうに始めたれん君でしたが、2ヶ月で「もうやりたくない」と言うように。同じような課題の繰り返しに飽きてしまい、「つまらない」「難しすぎる」と感じるようになっていました。

📍 工夫したこと:担任の先生はれん君の興味(恐竜)を活かし、「恐竜クイズゲーム」を作るプロジェクトを提案。自分の好きなことと学習をつなげることで、再び集中して取り組むように。

3ヶ月後、れん君は「今度は宇宙のゲームも作ってみたい!」と次々にアイデアを出すように。学習の楽しさを取り戻し、自分から進んで取り組む姿勢が戻りました。

🔍 やる気低下の原因分析
まずは「なぜ?」を理解
やる気が続かない背景には必ず理由がある。表面的な「やりたくない」ではなく、その奥にある本当の気持ちを探る。
よくある原因
課題が簡単すぎる・難しすぎる
興味・関心とのつながりが見えない
成功体験が不足している
他の子と比較されるプレッシャー
確認方法
• 「どんな時が楽しい?」と聞く
• 最後に楽しそうだった課題を振り返る
• 好きなこと・興味があることを探る
• 困っていることを具体的に聞く
💫 個別動機づけ戦略
その子に合った方法で
一人ひとりの興味・特性・学習スタイルに応じた動機づけの方法を選択し、実践する。
動機づけ手法
興味と学習内容の関連づけ
小さな成功の積み重ね設計
選択権・自主性の尊重
社会的意味・目的の明確化
具体的方法
• 好きなキャラクターで課題作成
• 達成しやすい小目標の設定
• 学習方法の選択肢提供
• 「誰かの役に立つ」プロジェクト
📈 継続支援システム
長期的な視点で
一時的な動機づけではなく、自律的な学習者として成長できるよう、継続的な支援体制を構築する。
支援のポイント
定期的な振り返りと調整
進歩の可視化・記録
仲間との学び合い促進
保護者・家庭との連携
継続の工夫
• 学習ポートフォリオ作成
• 週1回の個別面談時間
• ピア・サポート体制
• 家庭での取り組み共有
🏠 家庭でのやる気サポート

子どもの話を聞く:まずは「どう感じているか」をじっくり聞く
興味を活かす:好きなことと学習を結びつける工夫をする
小さな成功を褒める:結果より過程や努力を認める
選択権を与える:「どっちがやりたい?」など選択肢を提供

🏫 授業でのモチベーション管理

個別の理解:一人ひとりの興味・関心・困りごとを把握
多様な課題設計:同じ目標に向けて異なるアプローチを用意
自己決定の機会:学習方法や課題選択の自由度を提供
社会的価値:学習が他者や社会の役に立つことを実感させる

🐢
学習進度の遅れや理解不足への対処

「みんなについていけない...」という不安を抱える子どもへの支援方法と、個別ペースでの学習設計を学びましょう。

👧
ゆいちゃん(9歳)の「マイペース学習」成功記
遅れではなく個性として

プログラミングの課題で、クラスのほとんどの子が完成している中、ゆいちゃんはまだ途中で焦りを感じていました。「私って頭が悪いのかな...」と自信を失いかけていました。

📍 工夫したこと:担任の先生は、ゆいちゃんが「丁寧に考える」特性に注目し、他の子には気づけない細かい改善点を見つける「品質チェック係」の役割を与えました。

半年後、ゆいちゃんは「私はゆっくりだけど、しっかり考えられる」と自分の特性を受け入れ、クラスの中で重要な役割を担うように。進度は人それぞれでも、貢献の仕方は無限にあることを実感しました。

時間設定の個別化
→ その子に合った時間配分で課題に取り組める環境作り
🧩
課題の細分化
→ 大きな目標を小さなステップに分け、達成感を積み重ねる
🤝
協働学習の活用
→ 得意分野を活かした役割分担で全員が活躍できる場作り
💡
多様な理解方法
→ 視覚・聴覚・体験など複数の方法で理解を深める

👫
友達関係のトラブルが学習に影響する時

「○○さんがいるから嫌だ」「一人で作業したい」人間関係の課題が学習に影響している時の対応方法を学びましょう。

😔
たくみ君(10歳)とけいた君の関係修復
対立から協力へ

グループワークで意見が対立してしまったたくみ君とけいた君。お互いを避けるようになり、チーム活動にも支障が出てしまいました。「もうあの子とは一緒にやりたくない」という状況です。

📍 工夫したこと:担任の先生は、二人それぞれの得意分野(たくみ君はデザイン、けいた君はプログラミング)を活かした「特別ミッション」を用意し、お互いの良さを再認識できる機会を作りました。

1ヶ月後、二人は「僕たちってすごいチームかも」と言うように。違いを認め合い、むしろ補完し合える関係性を築き、クラス全体の雰囲気も向上しました。

👂
状況把握
関係悪化の経緯と、それぞれの気持ちを丁寧に聞き取る
例:個別面談、日記での振り返り、信頼できる第三者への相談
🎯
環境調整
当事者が安心して学習できる環境を一時的に整備
例:グループ変更、個別作業時間、座席配置の工夫
🌉
関係修復支援
お互いの良さを再認識できる機会や協力体験を設計
例:相互の強みを活かすプロジェクト、共通の目標設定
🌱
成長機会化
トラブルを人間関係スキル向上の学習機会として活用
例:コミュニケーション学習、多様性理解、問題解決スキル

⚖️
家庭学習と学校学習のズレを調整する方法

「家では上手にできるのに...」「学校と家で言うことが違う」環境や指導方法の違いで起こるズレを解決する方法を学びましょう。

🏠
田中家と学校の「連携プロジェクト」
違いを強みに変える

さくらちゃん(8歳)は家ではタブレットで創作活動に熱中するのに、学校ではなかなか集中できません。家庭と学校で使っているアプリも違い、操作方法も異なるため混乱していました。

📍 工夫したこと:担任の先生と保護者が「学習環境調整会議」を開き、家庭での成功体験を学校でも活かせるよう、使用ツールや指導方法を部分的に統一しました。

3ヶ月後、さくらちゃんは家庭と学校の両方で安定して学習に取り組めるように。「どこでも自分らしく学べる」という自信を獲得し、新しい環境にも適応しやすくなりました。

🔍 ズレの要因分析
根本原因を探る
家庭と学校での学習成果の違いが生まれる要因を多角的に分析し、調整ポイントを明確にする。
よくある要因
使用機器・アプリの違い
指導方法・評価基準の差異
環境(騒音、明るさ等)の違い
サポート体制の差
分析方法
• 家庭と学校での様子の詳細比較
• 子ども本人への聞き取り
• 学習環境・ツールの相違点確認
• 指導者間での情報共有
🔧 統合的調整戦略
連携による解決
家庭と学校の強みを活かしながら、子どもにとって最適な学習環境を協働で作り上げる。
調整のポイント
共通ツール・方法の部分導入
成功パターンの相互共有
評価基準の擦り合わせ
定期的な情報交換体制
具体的取り組み
• 家庭・学校連絡ノート活用
• 月1回の学習相談会
• 成功体験の記録・共有
• 指導方法の研修・見学
📈 継続的改善システム
長期的視点で
一時的な調整にとどまらず、子どもの成長に応じて柔軟に学習環境を進化させるシステムを構築。
改善の仕組み
定期的な効果測定
子どもの声の反映
新しい課題への対応
他事例からの学び
改善活動
• 四半期ごとの振り返り会
• 子どもからのフィードバック収集
• 新技術・方法の試験導入
• 他校・他家庭との事例交流
🏠 家庭から学校への情報提供

成功パターンの共有:家でうまくいっている方法を先生に伝える
困りごとの早期相談:小さな変化も見逃さず相談
協力的な姿勢:学校の方針も理解し、歩み寄る意識
継続的な対話:定期的な情報交換で連携を深める

🏫 学校から家庭への連携提案

家庭環境の理解:家での学習状況や工夫を積極的に聞く
成功事例の活用:家庭での良い取り組みを授業でも参考に
一貫性の配慮:大きく異なる指導は事前に調整・説明
柔軟な対応:子どもの状況に応じて方針を調整する意識

💡
今日の学びをふりかえろう

学習上の困りごとへの実践的対応について学んだことを振り返ってみましょう。

🌟 学習のふりかえり
学習支援において最も重要だと感じた視点はどれですか?
A
表面的な「困った」の奥にある本当の理由を理解すること
B
一人ひとりの特性や興味を活かした個別支援の重要性
C
家庭と学校が連携して一貫した支援を提供すること
D
困りごとを成長の機会として前向きに捉える姿勢