CHAPTER 01

「困った!」を「得意!」に変える応用技術

一人ひとりに合わせた上級サポート

🤔
「なぜうちの子だけ?」という悩み

📖 佐藤家の3兄弟の違い

同じ家庭で育っているのに、3人の子どもたちは全く違った反応を見せます。10歳のひろき君は何をやってもすぐに飽きてしまい、15分も集中が続きません。8歳のみかちゃんは一文字でも間違うとすべてをやり直そうとして、結局何も完成させられずに終わってしまいます。6歳のたくや君は他の子と比べられることを嫌がり、ランキングが表示されると画面から目をそらしてしまいます。

お母さんの佐藤さんは困っています。「同じ家で育っているのに、なぜこんなに違うの?ICT学習も、一人ひとりに合った方法があるはずなのに、どうすればいいか分からない」

💡 2級で身につける個別対応の実践力

3級では基本的な活動を「みんなで一緒に」行う方法を学びました。2級では一歩進んで、一人ひとりの困りごとを具体的に分析し、その子だけのオーダーメイド解決法を提案できる実践力を身につけます。「困った」を「得意」に変える技術を習得しましょう。

「集中が続かない子」の本当の姿

「集中力がない」は誤解です。実際に観察してみると、興味のあることには驚くほど集中できる子がほとんどです。問題は「集中力がない」ことではなく、「今の学習方法がその子に合っていない」ことなのです。

👦
ひろき君の大変身ストーリー
15分→30分への道のり

ひろき君は15分もするとソワソワし始め、画面から離れて歩き回ってしまいます。お母さんは「集中力がない」と心配していました。よく観察してみると、新しいことには目をキラキラさせて取り組むのですが、同じことを続けることが苦手だということが分かりました。

📍 工夫したこと:大きな目標を5分でできる小さなステップに分け、クリアするたびにバッジがもらえるシステムを導入。立って学習できる環境も準備しました。

3ヶ月後、ひろき君は30分間継続して学習できるようになり、「次は何分でできるかな?」と自分でタイマーを設定するようになりました。

時間を細かく区切る
大きな目標を小さなステップに分け、短時間で達成感を得られるようにします
例:20分の学習を5分×4セットに分割
🚶
体を動かしながら学習
立って使えるデスク環境や、歩きながらでも取り組める活動を用意
例:スタンディングデスク、音声学習
🔄
興味のローテーション
飽きる前に次の活動に移れるよう、複数のコンテンツを準備
例:算数→英語→プログラミングの循環
🏆
成功体験の積み重ね
できたことを可視化し、達成感を味わえる仕組みづくり
例:バッジシステム、進捗グラフ表示
🏠 家庭でできる集中力サポート

環境づくり:気が散る要素を減らし、集中しやすい空間を作る
時間設定:その子に合った集中時間を見つけて調整
褒めポイント:「集中できたね」より「○分がんばったね」と具体的に
休憩の工夫:体を動かす、目を休める休憩時間を大切に

🏫 授業での集中困難児への配慮

席の配置:気が散りにくい位置や、立っても迷惑にならない場所
活動の切り替え:集中状態を見ながら適切なタイミングで次へ
役割の工夫:その子が活躍できる役割を見つける
評価の視点:集中時間の長さより、取り組みの質を評価

「完璧主義で進めない子」への理解と支援

完璧主義は「責任感の強さ」です。「一文字でも間違うとやり直す」「完璧でないと見せたがらない」こんな子を見ると、つい「もっと気楽に」と言いたくなりますが、これは責任感や丁寧さの表れです。この特性を大切にしながら、前に進める方法があります。

👧
みかちゃんの心の変化
「完璧でなくても大丈夫」への気づき

みかちゃんは一文字でも間違うとすべてをやり直してしまい、結局何も完成させられませんでした。「人に見られるのが恥ずかしい」という気持ちも強く、作品を見せることも嫌がっていました。

📍 工夫したこと:「これは練習だから、誰にも見せなくていいよ」という安心できる環境を作り、AIアシスタントを「優しい先生」として活用しました。

6ヶ月後、みかちゃんの口癖は「まずやってみよう」になりました。間違いを見つけると「あ、ここを直せばもっと良くなる」と前向きに捉え、修正することも楽しんでいます。

📝
安心できる練習環境
まずは誰にも見せない「下書きモード」で気軽に表現練習
例:個人フォルダ、プライベートモード
🤖
AIとの練習対話
人間に見せる前にAIアシスタントで客観的なフィードバック
例:ChatGPT、文法チェッカー
📸
過程の記録
結果だけでなく、取り組みの過程を価値あるものとして記録
例:制作日記、学習ポートフォリオ
🔄
段階的な公開
個人→信頼できる友達→小グループ→全体へと段階的に共有
例:ペア発表→グループ発表→クラス発表
🏠 家庭でのサポートのポイント

安心感の提供:「間違っても大丈夫」というメッセージを日常的に
過程の評価:「がんばって取り組んでいるね」と努力を認める
失敗の再定義:「発見だね」「学習のチャンス」と前向きに
時間の余裕:急かさず、その子のペースを大切にする

🏫 教室でのサポート方法

心理的安全性:間違いを歓迎する雰囲気づくり
多様な評価軸:完成度だけでなく、工夫や努力も評価
発表の工夫:全体発表の前に小グループでの練習機会
時間的配慮:十分な準備時間と修正時間の確保

🤝
「競争が苦手な子」の本当の力

競争が嫌いな子は「協調性が高い子」です。ランキングが表示されると萎縮する、他の子と比べられると黙り込む。こんな様子を見ると「積極性がない」と思いがちですが、実は他者への思いやりや協調性の高さの表れなのです。

👦
たくや君が輝いた瞬間
「手伝ってあげる」の力

たくや君は他の子と比べられることを嫌がり、ランキングが出ると画面から目をそらしてしまいました。しかし、困っている友達がいると自然に声をかける優しさがありました。

📍 工夫したこと:他の子との比較ではなく「昨日のたくや君」と比べることにし、困っている友達のサポート役をお願いしました。

4ヶ月後、たくや君は「僕が手伝ってあげる」と積極的に声をかけるようになり、自信に満ちた表情を見せています。競争は苦手でも、協力することで大きな力を発揮できることを証明してくれました。

📊
自己比較の導入
他の子とではなく、過去の自分と比べて成長を実感
例:個人成長グラフ、昨日との比較
👥
協働プロジェクト
競争ではなく、みんなで一つの目標を達成する活動
例:クラス新聞制作、合同作品作り
🎭
サポート役での活躍
困っている友達を助ける役割で自信を育成
例:学習サポーター、技術ヘルパー
💝
貢献の可視化
人の役に立った場面を記録し、感謝の気持ちを伝える
例:感謝カード、貢献記録簿
🏠 協調性を活かす家庭環境

比較の工夫:兄弟間の比較を避け、それぞれの成長を認める
協力の場づくり:家事手伝いなど、家族の役に立つ場面を作る
感謝の表現:「○○してくれてありがとう」と具体的に感謝
個性の尊重:競争が苦手でも価値ある特性として認める

🏫 協調性を活かす授業づくり

評価の多様化:速さだけでなく丁寧さや協力性も評価
役割の工夫:その子が活躍できる協力的な役割を用意
グループ編成:競争より協働を重視したチーム作り
成果の共有:個人の成果よりチーム全体の達成を重視

📋
実践ガイド:我が子・教え子の「困りごと」分析

お子さんや教え子の学習場面を1週間、以下の視点で観察してください。「困った行動」ではなく「その子らしさ」として見てみましょう

🔍 観察のチェックポイント
👀
STEP1:観察
学習場面での具体的な行動を1週間記録
時間・場面・行動・感情を詳しく記録
🔍
STEP2:分析
その子の特性を「○○という特性がある」と整理
困りごとの背景にある強みを発見
💡
STEP3:対策
3つのパターンを参考に具体的な工夫を考案
一度に一つずつ、段階的に試行
📊
STEP4:評価
変化を記録し、必要に応じて対策を調整
2週間後、1ヶ月後の変化を確認

💡
今日の学びをふりかえろう

「困った!」を「得意!」に変える技術について学んだことを振り返ってみましょう。

🌟 学習のふりかえり
個別支援技術について学んだ中で、最も大切だと感じたことはどれですか?
A
一人ひとりの困りごとは、実はその子らしい特性の表れだということ
B
集中困難、完璧主義、競争回避それぞれに効果的な対応方法があること
C
観察→分析→対策→評価のサイクルで個別支援できること
D
すべてが重要で、今すぐ身近な子どもで実践してみたいと思ったこと