CHAPTER 05

法的問題と情報倫理の専門知識

法的リスクを理解し、適切に対応する

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著作権法の実務知識

📚 「教育だから何でもOK」は誤解

教育目的であれば著作物を自由に使えると思っていませんか?実は著作権法には教育に関する例外規定がありますが、無制限ではありません。1級指導者として、著作権の正しい知識を持ち、校内に広める役割が求められます。

💡 著作権法35条(学校その他の教育機関における複製等)

学校の授業で使用する場合、一定の条件の下で著作物を権利者の許諾なく複製・公衆送信できます。ただし、「著作権者の利益を不当に害する」場合は認められません。

📋 授業で使える範囲

できること
授業で必要な範囲での複製、授業目的の公衆送信(オンライン配信)、引用のルールに従った利用。
例:教科書の一部をプリント配布、新聞記事を授業で投影
できないこと
著作物の全部をコピー、市販されているものの購入を避けるための複製、授業外での配布。
例:問題集を丸ごとコピー、映画を全編視聴、学校HP公開
⚠️
グレーゾーン
部活動での使用、保護者への配布、学校行事での上映など、「授業」の範囲外は要注意。
例:文化祭での音楽使用、部活でのYouTube視聴
📌 (授業目的公衆送信補償金制度)
SARTRAS(サートラス)とは 一般社団法人 授業目的公衆送信補償金等管理協会の略称。著作権法改正により2020年に設立され、オンライン授業等で著作物を利用する際の補償金を著作権者に分配する仕組みを運営しています。学校設置者が年額で補償金を支払うことで、個別の許諾なく著作物を配信できます。

2020年から、オンライン授業での著作物利用に対して補償金を支払う制度が始まりました。多くの学校では設置者(教育委員会等)が一括で支払っています。これにより、オンライン授業での著作物利用がしやすくなりました。

✅ 引用のルール(著作権法32条)
🏠 家庭での著作権意識

違法ダウンロード:音楽や映画の違法入手は犯罪
SNS投稿:他人の作品を無断で投稿しない
良いお手本:親が著作権を守る姿を見せる

子どもに「人の作ったものを大切にする」意識を育てましょう。

🏫 校内での著作権指導

教員への研修:著作権法35条の範囲を正しく理解
児童への指導:「コピペはダメ」だけでなく理由を説明
相談窓口:判断に迷ったら相談できる体制

1級指導者として、著作権に関する校内の相談役になりましょう。

🔐
個人情報保護法

📚 学校は「個人情報の宝庫」

学校には、氏名、住所、成績、健康情報、家庭状況など、極めて機微な個人情報が集まっています。2022年の法改正により、公立学校も個人情報保護法の対象となり、適切な管理と漏洩時の報告義務が課されています。

📋 個人情報取扱いの基本原則

1️⃣
利用目的の特定・公表
何のために集めるかを明確に

個人情報を取得する際は、利用目的を特定し、本人に通知または公表する必要があります。

📌 学校での例:入学時に「学校運営のため」と説明、プライバシーポリシーの掲示
2️⃣
目的外利用の禁止
集めた目的以外に使わない

本人の同意なく、当初の目的以外に個人情報を利用することはできません。

📌 学校での例:緊急連絡先を営業目的で使用→NG、災害時の安否確認→OK
3️⃣
第三者提供の制限
勝手に他者に渡さない

本人の同意なく、個人情報を第三者に提供することは原則禁止です(法令に基づく場合等は例外)。

📌 学校での例:卒業生名簿を企業に販売→NG、警察からの照会に回答→OK(法令)
4️⃣
安全管理措置
漏洩しないよう守る

個人情報の漏洩、滅失、毀損を防ぐための措置を講じる義務があります。

📌 学校での例:パスワード管理、鍵付き書庫、アクセス権限の設定
💡 要配慮個人情報

人種、信条、病歴、犯罪歴、障害など、不当な差別につながりうる情報は「要配慮個人情報」として、より厳格な取り扱いが求められます。学校では、健康診断結果、発達障害の診断、家庭の状況などが該当します。

🏠 保護者としての権利

情報の確認:学校が持つ子どもの個人情報を確認できる
訂正の請求:誤った情報があれば訂正を求められる
同意の判断:写真掲載等の同意は慎重に判断

学校に預けた情報がどう管理されているか、関心を持ちましょう。

🏫 日常業務での注意点

机上に放置しない:成績表や名簿は使用後すぐに片付ける
会話に注意:職員室外での児童の話題は控える
メール・クラウド:宛先確認、共有設定の確認を徹底

1級指導者として、校内の個人情報保護ルールを整備・周知しましょう。

📸
肖像権・プライバシー

📚 「良かれと思って」がトラブルに

運動会の写真をSNSに投稿、学校HPに児童の作品を掲載──良かれと思った行為がプライバシー侵害になることがあります。特に子どもの画像は、将来にわたって影響が残る可能性があり、慎重な取り扱いが必要です。

📋 肖像権の基本

📷
撮影の許可
人を撮影する際は、原則として本人の同意が必要。子どもの場合は保護者の同意も。
学校での対応:年度初めに撮影・掲載の同意書を取得
🌐
公開の許可
撮影OKでも公開OKとは限らない。公開範囲(校内のみ、HP、SNS等)を明確にして同意を得る。
学校での対応:「撮影OK、HP掲載NG」など個別に確認
🗑️
削除の権利
掲載された写真の削除を求める権利がある。特にネット上の画像は「」になりうる。
デジタルタトゥーとは インターネット上に公開された情報が、入れ墨(タトゥー)のように半永久的に残り続けることの比喩。一度拡散された画像や投稿は完全に削除することが困難で、将来の就職や人間関係に影響を及ぼす可能性があります。特に子どもの写真は本人の同意なく公開されることが多く、問題視されています。
学校での対応:削除依頼があれば速やかに対応
✅ 写真・動画取扱いのチェックリスト
📌 「忘れられる権利」と子どもの将来

ネット上に公開された画像は、削除しても完全には消えないことがあります。子どもが成長したときに、過去の画像が本人の意に反して残り続けるリスクを考慮し、公開は慎重に判断しましょう。

🏠 保護者としての判断

同意書は慎重に:「全部OK」ではなく、公開範囲を確認して判断
SNS投稿:自分の子どもの写真に他の子が写っていないか確認
将来を考える:10年後、子どもがこの写真を見てどう思うか

子どもの「」を親が作ってしまわないように。

デジタルフットプリントとは インターネット上に残る個人の活動の痕跡(足跡)のこと。SNS投稿、検索履歴、オンライン購入記録など、意図的・非意図的に残るデータ全般を指します。親が子どもの写真をSNSに投稿することで、子ども本人が知らないうちにデジタルフットプリントが作られてしまう問題が指摘されています。
🏫 学校としてのルール作り

同意書の整備:撮影・公開の同意を年度ごとに取得
公開ガイドライン:HP、SNS、学校だより等での掲載ルール
保護者への説明:なぜ同意が必要か、どう管理するかを説明

1級指導者として、写真・動画の取扱いルールを整備しましょう。

🤖
AIと知的財産

📚 新しい技術、新しい問題

生成AIの登場により、これまでの著作権法では想定されていなかった問題が生じています。法整備も進行中であり、教育現場でも新しい課題に対応する必要があります。

❓ AIと著作権の主な論点

📚
学習データの問題
AIが学習に使ったデータには著作権のある作品が含まれる。これは著作権侵害か?
現状:著作権法30条の4で一定の条件下では適法とされるが、議論継続中
✍️
生成物の著作権
AIが作った文章や画像に著作権はあるか?誰のものか?
現状:AI単独の生成物には著作権なし、人間の創作的寄与があれば著作権発生の可能性
⚠️
類似性の問題
AIの出力が既存作品に似ている場合、著作権侵害になるか?
現状:実質的に類似し、依拠性があれば侵害の可能性
👤
責任の所在
AIが問題のある出力をした場合、誰が責任を負うか?
現状:利用者が責任を負うとの考えが主流、ただし議論中
💡 教育現場での実践的な対応

AIの利用を明示:AIを使った場合はその旨を記載する
丸写しは禁止:AIの出力をそのまま自分の作品として提出しない
確認の習慣:AIの出力が既存作品に酷似していないか確認
人間の編集:AIの出力を「材料」として、自分で編集・発展させる

🏠 家庭での会話のヒント

「AIが作ったものは誰のもの?」:著作権について考えるきっかけに
「AIに書いてもらったらダメ?」:自分で考えることの大切さを伝える
「AIは間違えることもある」:鵜呑みにしない姿勢を教える

AIの正しい使い方を、家庭でも話し合ってみましょう。

🏫 学校でのAI利用ルール

ガイドライン整備:AIの利用についての校内ルールを策定
課題設計の工夫:AIでは答えにくい課題(体験・個人の意見)を設計
正直な申告:AIを使ったことを正直に申告できる雰囲気づくり

1級指導者として、AI利用に関する校内の方針策定をリードしましょう。

💡
今日の学びをふりかえろう

ここまでの内容を踏まえて、法的問題について考えてみましょう。

🌟 学習のふりかえり
法的問題で最も注意が必要だと感じるのは?
A
著作権の取り扱い - 教材作成や授業での利用
B
個人情報の保護 - データの収集・管理・共有
C
肖像権・写真の扱い - 撮影・公開のルール
D
AI関連の新しい問題 - 生成AIの権利と責任