CHAPTER 02

ギフテッド・2E児への対応

才能を伸ばし、困難を支える

ギフテッドとは

📚 「できる子」の見えない困難

「勉強ができるんだから問題ないでしょ」「授業が簡単すぎてつまらない」──高い能力を持つ子どもたちは、一見すると恵まれているように見えます。

しかし実際には、同年代との話が合わない、授業に退屈する、完璧主義で苦しむなど、独自の困難を抱えていることが多いのです。

💡 ギフテッドの定義

ギフテッド(Gifted)とは、知的能力や特定の才能(芸術、音楽、運動、リーダーシップなど)が同年齢と比べて著しく高い子どもを指します。日本では明確な定義がなく、「特定分野に特異な才能のある児童生徒」として文部科学省が支援を進めています。2023年には有識者会議の報告書が公表され、学校での支援の在り方や教員の理解促進について具体的な方向性が示されました。

🌟 ギフテッドの主な特性

🧠
認知面の特性
抽象的思考が早い、好奇心が強い、深い集中力、知識の吸収が速い。
例:幼児期から難しい本を読む、大人顔負けの質問をする
❤️
情緒面の特性
感受性が強い、正義感が強い、完璧主義、自己批判的になりやすい。
例:世界の問題に心を痛める、自分のミスを許せない
👥
社会面の特性
同年代より年上との会話を好む、孤立しやすい、「変わった子」と見られる。
例:クラスメイトと話が合わない、一人でいることを好む
📌 ギフテッドが直面する課題

:高い能力があるのに成績が伴わない状態。授業への退屈や学習意欲の低下が原因となることが多い
アンダーアチーブメント(Underachievement)とは 本来持っている能力と実際の成績や成果との間に大きなギャップがある状態。ギフテッドの子どもが授業に退屈して意欲を失ったり、完璧主義から課題を避けたりすることで起こりやすい。「やればできるのに」と誤解されがちだが、環境や心理的要因が複雑に絡んでいることが多い。 不適応:学校環境に合わず、不登校や問題行動につながることも
見過ごされる:日本では支援制度が未整備で、困っていても気づかれにくい

🏠 保護者として気をつけたいこと

「できるからいいでしょ」と言わない:能力が高くても、困難は本物
知的好奇心を満たす:図書館、博物館、オンライン講座など探究の機会を
完璧主義への対応:「失敗してもいい」というメッセージを繰り返す

「うちの子は普通じゃない」と悩むより、「この子に合った環境は何か」を考えましょう。

🏫 教育者として知っておきたいこと

退屈させない工夫:早く終わった子への発展課題の用意、深い探究の機会を提供。ミニ先生として他の子をサポートする役割を任せるのも効果的
特別扱いではない:「全員に選択肢を」の考え方で、自然に対応
情緒面のケア:能力が高くても、心のサポートは必要。完璧主義による苦しみに気づく

「この子は放っておいても大丈夫」ではなく、ギフテッドにも支援が必要です。

🔄
2E(Twice-Exceptional)とは

📚 才能と困難が「打ち消し合う」問題

2E(Twice-Exceptional:二重に特別な)とは、ギフテッドの高い能力と、発達障害などの困難さを同時に持つ子どものことです。

問題は、才能が困難を隠し、困難が才能を隠すこと。結果として、どちらも見過ごされ、「やればできるのに怠けている」「なぜかうまくいかない」と誤解されやすいのです。

🎭 2Eの3つのパターン

🌟
才能が目立ち、困難が隠れるタイプ
「できる子」として見過ごされる

高い能力で困難をカバーしているため、周囲からは「問題なし」に見える。しかし本人は人一倍努力しており、疲弊している場合が多い。

📌 気づきのポイント:成績は良いが疲れやすい、突然のパニック、完璧主義が極端
⚠️
困難が目立ち、才能が隠れるタイプ
「問題のある子」として支援が偏る

発達障害の特性が前面に出て、高い能力が見過ごされる。困難への支援は受けられるが、才能を伸ばす機会がない。

📌 気づきのポイント:特定分野で驚くほど詳しい、独創的な発想、大人との会話を好む
才能と困難が打ち消し合うタイプ
「平均的」に見えて、どちらも見過ごされる

高い能力と困難が相殺され、テストの点数は「普通」に見える。結果としてギフテッドとも発達障害とも認識されず、支援を受けられない。

📌 気づきのポイント:能力にムラがある、得意と苦手の差が極端、努力の割に成果が出ない
🏠 2Eの子どもを持つ保護者へ

「どっちなの?」と悩まない:才能も困難も「両方ある」と捉える
強みにフォーカス:苦手の克服より、得意の伸長を優先
専門家への相談:発達障害と才能の両面を理解している専門家は限られています。まずは地域の教育センターや大学の発達相談窓口、ギフテッド・2E支援の民間団体に問い合わせてみましょう

「この子はどこにも当てはまらない」と感じたら、2Eの可能性を考えてみてください。

🏫 2Eへの支援のポイント

両面からのアプローチ:困難への配慮と、才能を伸ばす機会の両方を
強みベースの支援:苦手分野を得意な方法で補う(例:書けないがタイピングは得意)
柔軟な評価:表現方法を選べるなど、多様な評価方法

2Eは「矛盾した存在」ではなく、「両方を持つ存在」として理解しましょう。

💻
ICTを活用した発展的学習支援

ギフテッド・2E児にとって、ICTは知的好奇心を満たし、困難を補う強力なツールです。学年や年齢の枠を超えた学びを可能にします。

🚀 ICT活用の具体的方法

📚
先取り・拡充学習
学年を超えた内容や、教科書より深い内容にアクセスできる環境を提供。
ツール例:Khan Academy、Coursera、YouTube教育チャンネル、 MOOCs(ムークス)とは Massive Open Online Coursesの略で、「大規模公開オンライン講座」のこと。世界中の大学や機関が提供する無料または低価格のオンライン講座。Coursera、edX、Udemyなどが代表的。ギフテッドの子どもが学年を超えた高度な内容を自分のペースで学ぶのに適しています。
🔬
プロジェクト学習(PBL)とは Project-Based Learningの略。実社会の課題や問いに取り組みながら、知識やスキルを総合的に学ぶ手法。ギフテッドの子どもの深い探究心や創造性を活かせる学習方法として注目されています。成果物の作成を通じて学びを深めます。
興味のあるテーマを深く探究し、成果物を作成するプロジェクト型の学び。
ツール例:Scratch、Google Sites、動画編集ソフト、3Dモデリング
🌐
オンラインコミュニティ
同じ興味を持つ仲間とオンラインでつながり、孤立感を軽減。
例:プログラミングコミュニティ、科学オリンピック、オンライン研究発表会
👨‍🏫
オンライン
メンターとは 経験や知識を持つ助言者・指導者のこと。ギフテッドの子どもにとって、同年代では得られない知的刺激や専門的な指導を受けられる存在。大学生、研究者、専門家などがオンラインでメンターとなることで、地理的制約なく高度な学びの機会を提供できます。
専門家や大学生とオンラインでつながり、個別指導を受ける。
例:ビデオ通話での個別指導、専門家へのQ&A、研究者との対話
✅ 2E児へのICT支援(困難面のカバー)
マインドマップとは 中心にテーマを置き、関連する情報を放射状に枝分かれさせて描く思考整理法。トニー・ブザンが提唱。ギフテッドや2Eの子どもが持つ豊富なアイデアを視覚的に整理するのに効果的。XMind、Coggle、MindMeisterなどのデジタルツールも活用できます。
過集中(ハイパーフォーカス)とは 興味のある活動に極度に没頭し、時間の経過や周囲の状況に気づかなくなる状態。ADHDやギフテッドに見られることが多い。強みにもなるが、切り替えの困難や生活リズムの乱れにつながることも。タイマーや声かけなどの外部からの合図が有効です。
📌 支援のバランス

才能を伸ばす支援困難をカバーする支援の両方が必要です。どちらか一方に偏らないよう注意しましょう。

例:プログラミングの才能を伸ばす(発展的学習)+ 書字の困難をキーボードでカバー(

合理的配慮とは 障害のある人が他の人と同じように活動できるよう、状況に応じて行われる必要かつ適切な調整のこと。障害者差別解消法により、公的機関には義務、民間事業者には努力義務として求められています。「過度な負担」にならない範囲で提供される配慮です。
🏠 家庭でできる発展的学習支援

オンライン学習の活用:興味のある分野の講座を一緒に探す
探究テーマの支援:「調べてみたら?」と背中を押し、一緒に調べる
発表の機会:家族に向けてプレゼンする時間を作る

「学校で習ってないから」と止めず、先に進みたい気持ちを応援しましょう。

🏫 学校での発展的学習の提供

個別学習計画:発展的課題を含む個別の学習計画を作成
校内リソースの活用:図書室、コンピュータ室での自主的な探究時間
外部連携:大学、研究機関、企業との連携プログラム

「飛び級」がなくても、「内容の深化」「横への広がり」で対応できます。

💡
今日の学びをふりかえろう

ここまでの内容を踏まえて、ギフテッド・2E児への対応について考えてみましょう。

🌟 学習のふりかえり
ギフテッド・2E児への対応で最も重要だと思うことは?
A
知的好奇心を満たす挑戦の機会 - 物足りなさを感じさせない学習環境
B
困難さへの適切な支援 - 強みだけでなく弱みへの配慮
C
周囲の理解と受容 - 「変わった子」ではなく特性として理解
D
才能と困難の両面を見るバランス - 複合的な視点での支援